広がる表現「多様なジェンダー」描くドラマの魅力 新たな見せ方の工夫が作り手にとっては面白い

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ジェンダーバイアスのかかった表現を避けることを、「窮屈になる」と言う人もいる。例えば冒頭で触れた「最愛」のお茶汲み場面も、単なるポリコレ対応と受け取る人もいるだろう。しかし筆者は「部下たちにコーヒーをいれることなど何とも思わないばかりか、むしろそうやって距離を縮めておいて利用するときは容赦なく利用する」という、係長の一見人当たりはいいが実は狡猾な側面が想像できる巧いシーンだと思った。

ある表現を避けるために新たな見せ方を工夫することは、優秀な作り手にとっては面白いことに違いない。ジェンダー表現にセンシティブになることは表現の幅を狭めるどころか、むしろ多様な表現の可能性につながるはずだ。

同性愛に関しても普通に描かれるようになってきた

紙幅が足りずに詳しく触れられなかったが、以前は「禁断の愛」などとセンセーショナルな描かれ方が多かった同性愛に関しても、「きのう何食べた?」(テレビ東京、2019年)のシロさんとケンジや、「コタキ兄弟と四苦八苦」(同、2020年)のさっちゃんと未知留のように、同性カップルが普通に恋をして、普通に一緒に暮らす姿も描かれるようになってきた。

また、志尊淳が見た目は女性で体は男性、恋愛対象は女性というトランスジェンダーのヒロイン・みきを見事に演じた「女子的生活」(NHK、2018年)や、最近では他者に恋愛感情も性的欲求も持たないアロマンティック・アセクシュアルをテーマにした「恋せぬふたり」(NHK)が1月にスタートするなど、多様な性のあり方を描く作品も目立つようになった。

凝り固まったジェンダーバイアスを壊し、多様なジェンダーの姿を映す。そんなドラマが、これからも増えていってほしい。

岩根 彰子 フリーライター、『GALAC』編集委員

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いわね しょうこ / Shoko Iwane

1970年東京都生まれ。ライター。大学卒業後、編集プロダクション勤務を経てフリーに。インタビュー記事や映画評、単行本の編集・ライティングなどを手がける。

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