広がる表現「多様なジェンダー」描くドラマの魅力 新たな見せ方の工夫が作り手にとっては面白い
2021年の連続テレビ小説「おかえりモネ」(NHK)は、そんな古臭い「仕事か、結婚か」のステレオタイプを軽やかに超えてみせた。
百音(清原果耶)と恋人の菅波(坂口健太郎)は、やりたい仕事をするために今いる場所を離れなければならないとき、どちらかが自分の仕事を諦めて相手についていくという選択をしない。
それが結婚を考え始めた時期であっても彼らが悩むのは「ついていくか、いかないか」ではなく、「別々の場所で、共に生きる」という自分たちの選択を親が受け入れてくれるどうかだ。
男だから、女だからという枠にとらわれず、互いを尊重しながら自分たちのやり方で人生を歩んでいく。新しい風が吹き込むような、爽やかな選択だった。
同年の「着飾る恋には理由があって」(TBS)でも、それぞれに自分のやりたいことを見つけたくるみ(川口春奈)と恋人の駿(横浜流星)は、「仕事か、結婚か」ではなく「仕事も、結婚も」という選択をする。キッチンカーで全国を回る駿のもとに、娘を連れ自分で車を運転してきたくるみは、気負わずに自立した魅力的な女性に見えた。
「男はこうあるべき」の規範に縛られていない
両作品に共通しているのは、ヒロインの相手役である男性側も「男はこうあるべき」というジェンダー規範に縛られていないところだ。
例えば恋愛ドラマでは結婚を望まない男性キャラクターは「責任感がない人間」として描かれることが多い。これもまた「男は結婚して一人前」「男は女を養うべき」といった古いジェンダーロールの裏返しだ。
それに対して、微に入り細を穿って反論=結婚しない理由を表明し続けた「結婚できない男」(関西テレビ、2006年)と「まだ結婚できない男」(同、2019年)は、男性側からのジェンダーフリーを謳ったドラマとしてエポックメイキングな一作だった。
しかし阿部寛が演じた主人公・桑野はドラマのなかで変人扱いされている(そこが本作の面白さの肝ではあるのだが)。
それに対して菅波や駿は、押しつけられたジェンダー規範からもっと自然に解き放たれていて、とても新しく感じられた。つまり男性がジェンダーロールから自由になることで、女性もまた自由になれるということを、この2作はうまく伝えていた。
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