KDDIの新構想は、スマホの中に"山手線" ユーザー規模4100万人のアライアンス

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新しい構想の特徴として、旗振り役であるKDDIが”黒子”に徹している点が挙げられる。KDDIの田中孝司社長は10月16日の発表会見でも「今日の発表は、auということを忘れて聞いてください」ときっぱり。参加企業の関係者が集結して披露されたサービスメニューの中に、auやKDDIのロゴを目にすることはなかった。森岡氏も「オープンインターネットの取り組みで、auがどうといったことはあまり考えていない」と話す。

露出を抑えているのは、プラットフォームの狙いがKDDI以外のユーザーとの接点を持つことにあるからだ。KDDIでは自社向けコンテンツサービス「auスマートパス」(会員数1100万)を展開するが、これだけでは他社のユーザーにリーチできない。とはいえ、携帯電話会社のサービスを他社に開放してヒットした試しもない。そこでKDDIは黒子に徹し、プラットフォームを提供することで、他社ユーザーにもリーチしようと考えた。

集客拡大を優先、収益化は未定

高橋誠専務は「今後、アクセスしたユーザーのデータを分析して送客の仕組みを変えたり、サービス改善に生かしたりする。電子マネーサービスなどリアルとの連携も考えている」と話す。もっとも、ユーザーとの接点をうまく作れたとして、そこからKDDIとしてどのようなビジネスに結び付け、収益化していくかという点は未定だ。

さらに、今回参加した12社が本当に各ジャンルの”強者連合”なのか、ユーザーは各サービスに共通するサイドメニューを活用できるのかといった点にも疑問が残る。森岡氏は「第2弾、3弾と発表していきたい」としている。携帯会社の発想から離れた”山手線”のプラットフォームは、いったいどれだけの人の往来を創出できるのか。収益化も見据えるならば、KDDIにとって難易度の高い挑戦となりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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