政権発足100日超、見えてきた「岸田流」強さと限界 安倍氏、菅氏より「まとも」の評価も進まぬ改革

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さらに、政権運営は「安全運転」だ。1月17日召集の通常国会に提出する法案は58本に絞った。外国人収容と送還のルールを見直す入管難民法改正案は野党の反発が予想されることから、再提出を見送った。

コロナの感染拡大に対応するため、民間病院や開業医などに対する国や都道府県の指揮・管理の強化を狙った感染症法改正も先送りとなった。野党から注文がつく可能性があるほか、医師会などからも不満が出ることが予想されるためだ。与野党対立の火種になりそうな法案は提出せずに、安全運転で通常国会を乗り切って夏の参院選に臨もうという狙いは明らかだ。

だが、課題は山積している。第1にオミクロン株の感染拡大だ。デルタ株などに比べて重症化する比率は低いものの、感染者数は第5波を大きく上回り、自宅療養者は急増。病院に行けないまま症状が悪化するケースも目立ってきた。

岸田首相は病床確保を進めてきたと言うが、感染者が急増すれば、病床が不足するのは避けられない。医師や看護師の確保も、法律上の強制力を伴っていないため、「お願いベース」では限界がある。感染症法の改正を先送りしたツケが出てきそうだ。

ワクチン接種についても、昨年12月段階で3回目接種を加速すべきだという動きがあったものの、十分な量を確保することができずに、欧米諸国などに比べて、大きく出遅れた。国会審議では野党が岸田首相の決断の遅れを追及する構えだ。

岸田政権にとっては「我慢の3カ月」

第2に経済の停滞だ。昨年末には感染が落ち着き、経済の立て直しに向けた2022年度の予算案編成が進められた。しかし、オミクロン株の感染拡大が景気回復に水を差すことは避けられない。

アメリカでは景気回復が進み、インフレ抑制のために金利引き上げも視野に入ってきた。マイナス金利が続く日本との金利差によって、円安・輸入物価高がじわじわと進んでいる。日本が不景気の中の物価上昇で参院選を迎えるようだと、政権への風当たりは厳しくなる。

日本の場合、1月に新年度予算案を国会に提出し、3月末まで衆参両院で審議が繰り広げられることから、経済情勢が悪化しても、この間に政府が新たな景気対策を打ち出すことができない仕組みになっている。岸田政権にとっては「我慢の3カ月」が続くのである。

岸田首相は「新しい資本主義」を掲げて、「新自由主義からの脱却」を唱えている。だが、成長戦略や分配政策に具体策はなく、企業に賃上げを求めているものの、実現の道筋は見えていない。

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