幸福になりたいと願う人が幸福から遠ざかる皮肉 真剣に考えるにはあまりにも重すぎるテーマ

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実際、幸福研究は「幸福とは異常な状態だ」という認識の上に成り立っています。

幸福について書かれた最初の研究論文は、100年余り前に『異常心理学ジャーナル』という学術誌に掲載されました。心理学者ジークムント・フロイトは、1929年に「幸福は必ず各個人の最も原始的な欲求を満たすことで生じる」という本を出版しています。この「最も原始的な欲求」とは文明社会では不謹慎と見なされている欲求を指し、フロイトは「人々が幸福になれないのは文明社会のせいだ」という言葉を残しています。

また、幸福を追求しすぎることは「ハッピーコンデリ症」を引き起こしかねません。ハッピーコンデリ症とは、「自分は今よりも幸福でなければならない」と考えるせいで、実際よりも不幸だと思い込む症状です。なので「幸福か否か」という2択で考えるのではなく、「どのくらい幸福か」で現在の自分をとらえるほうが健全なのです。

強く求めすぎると遠ざかる

幸福を基準に物事を考えはじめると、そのものごと自体をあまり楽しめなくなります。ある研究で、研究者たちは被験者に「音楽を聴くと幸せになれると思いますか?」という質問をし、明るい曲を聴いてもらいました。音楽を聴いている間は楽しそうだった被験者も、その音楽をどれだけ楽しんだかを評価する段階になると平均して低い答えを出す結果に。この質問によって、自動的に幸福度を基準にして音楽を評価するようになったためです。

映画を観る人を対象に行われた同様の実験でも、映画を観ると幸福になるかもしれないと期待した人は、映画鑑賞をあまり好まなくなりました。

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