幸福になりたいと願う人が幸福から遠ざかる皮肉 真剣に考えるにはあまりにも重すぎるテーマ

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冒頭のフィンランドの例のように、最近では、人よりも幸福を真剣に考えている人は、平均して幸福度が少し低いという研究結果が出ています。ある研究チームは、幸福の追求が鬱病と双極性(鬱状態と躁状態を行ったり来たりする起伏の激しい状態)に関係しているという仮説を検証し、それが正しいと実証されました。幸福は真剣に考えるにはあまりにも重すぎるテーマなのです。

上げ幅がわずかでも幸福そのものはすばらしいもの

幸福は、私たちがあまりに大きな要求をしなければ、私たちをより良きものにしてくれる存在です。加えて、幸福は、私たちの精神状態や寿命、何をするか、誰と暮らすかといったことに影響します。

『幸福についての小さな書』(サンマーク出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

私たちは、「健康なとき幸福を感じるように、幸福感が高いときこそ健康である」といった相互性のある関係を踏まえる必要があるのです。たとえ、幸福度の上昇が一瞬であっても、上げ幅がごくわずかであっても、幸福そのものはすばらしいもので、あなたを今より少しだけすばらしい存在にしてくれます。

今よりもっと大きな幸福が存在したとしても関係ありません。幸福とは、良し悪しを判断できるパフォーマンスではなく、常に良いものなのです。

幸福は計画できるものでもありません。前回の記事(「金曜に幸福感の高まる人が多い意外な事実の根拠」1月14日配信)で書いた内容を実行したときに、サプライズのようにやってくるすばらしい感覚、それが幸福です。

訪れては去って行く。大きいときもあれば小さいときもある。そんなふうにいつまでも完成しないけれどすばらしい感覚、それが幸福です。

前回:金曜に幸福感の高まる人が多い意外な事実の根拠(1月14日配信)

ミカエル・ダレーン ストックホルム商科大学経営戦略・マーケティング学部教授

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Micael Dahlen

ストックホルム商科大学経営戦略およびマーケティング学部教授。著者がスウェーデン王立劇場でおこなった「幸福について」というテーマのレクチャーは満席だった。著書に『Starkt kul(最強に愉快)』『Kaosologi(カオスの論理)』『Nextopia(次のユートピア)』『En liten bok om meningen med livet(人生の意味についての小さな本)』(すべて未邦訳)がある。これらの著書も、幸福に関する作品である。

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