土地なのに建物も「建築条件付き」の怖いトラブル プランに自由度があるなどメリットも多数

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建築条件付き土地には、メリットもある。例えば、土地の売り主が施工会社やグループ会社であることが多く、土地の売買よりも建築工事が主目的になるので、建築条件のない場合よりも土地の価格を抑えて設定しているケースが多い。また、建売一戸建てと比べれば、プランに自由度がある。

ほかにも、施工会社を選ぶ時間を節約でき、土地購入から設計・施工、引き渡しまでが一貫して行われるなど、スピードやワンストップといった点をメリットに感じる人もいるだろう。住宅のプランに強いこだわりのない人、引き渡しまでのスピードを重視する人には、向いている選択肢かもしれない。

一方、ある程度自由にプランニングしたい人は、自由に設計できるとされていても、実際にどの程度自由にできるか、プランを変えることでどんな追加料金が発生するかなどをあらかじめ確認しておく必要がある。併せて、土地の代金や参考プランの建築工事費用のほかに必要となる費用がないかなども、しっかり確認しておきたい。

業界団体がサポート体制を整える動きも

建築条件付き土地の売買では、売買を仲介する不動産会社が関わることが多い。不動産会社=宅地建物取引業者(以下、宅建業者)は、土地の売買契約が締結された段階で、仲介の業務は終わる。しかし、その後の建築工事請負契約についてトラブルが生じた際に、不動産会社に相談されたり、トラブル対応を求められたりすることもある。

不動産仲介会社の業界団体のひとつ、全国宅地建物取引業協会連合会では、宅建業法で媒介業務以外の関連業務を行うことが認められていることから、専門知識の乏しい買い主が施工会社とプランの打ち合わせをする際に助言したり、請負契約をする際に立ち会ったり、引き渡しまでの段取りを確認したりなどの支援について、「関連業務」として位置づけ、別途有償でサポートすることに動き出した。

同連合会が国土交通省に照会したところ、「土地を媒介した宅建業者が請負工事に関するサポートを行う場合、媒介契約とは別に業務内容・報酬額等を明らかにした書面で買い主と契約を締結すること」という回答を得た。そこで、「建築条件付き土地売買における建物引渡し等に関する業務委託契約書」の参考書式を作成し、連合会の会員会社に活用を促している。

不動産会社は建築士ではないので、建築に関する知識で助言をすることはできないが、契約やローンに関する知識や引き渡しまでの流れなどについては精通しているので、不安があるならこうしたサポートを検討してもよいだろう。

さて、建築条件付き土地は、土地の売買と住宅の建築工事と2段階の契約になる特有の物件だ。最終的に手に入るのが新築の一戸建てとなるが、注文住宅とも分譲の建売住宅とも異なるものなので、ルールをよく理解したうえで購入を検討してほしい。手に入れた住宅が、不快な思いをした住宅になるか満足した住宅になるかは、買い手となるあなたにかかっている。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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