アメリカは第2の9.11を阻止できるか? CIAとテロリストの頭脳戦『ホームランド』

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イラク帰還兵は英雄か、テロリストか

ブロディ(右)と妻

イラク赴任中に行方不明となっていたアメリカ海兵隊の軍曹ニコラス・ブロディ(ダミアン・ルイス)。アルカイダの基地から米軍により奇跡的に救出され、8年ぶりに英雄として母国に帰還する。

だが、CIAのキャリー・マティソン(クレア・デインズ)は、イラクでの任務遂行中に内通者から得た情報により、ブロディが「洗脳されアルカイダに寝返ったテロリスト」だと確信する。周囲は否定的だが、キャリーは自分を“対中東”のエキスパートに育てた恩師のエージェント、ソール・ベレンソン(マンディ・パティンキン)に協力を仰ぎ、独自にブロディを監視する。

キャリー(右)とソール

優秀なソールもブロディの言動に疑念を覚え始める中、キャリーはブロディの正体を暴くことに異常なまでの執念を燃やしていく。

はたして、ブロディは世間の目を欺く国家の敵なのか? そして、キャリーたちは第2の9.11を阻止することができるのか──?

アメリカの正義に疑問を投げかける

本作はイスラエルのTVシリーズをベースとしているが、大部分はオリジナルと言っていい。『24-TWENTY FOUR-』を見たことがある人も多いと思うが、面白さの共通点はシリーズ途中で「だまされた!」と思わず膝を打ちたくなるいくつもの仕掛けがあることと、一度見始めたら次のエピソードが待ちきれなくなる連続性の強さだろう。

だが、『HOMLAND/ホームランド』に関しては、いきなり混乱状態のバグダッドから始まる冒頭に、もしかしたら腰が引ける人もいるかもしれない。しかし、もし第2話のラストまで見たら、現在、DVDでリリースされているシーズン3の最終話まで、見ずにはいられなくなること請け合いだ(各シーズン全12話)。

ただし、作品のノリとしてはアクションよりも圧倒的に心理戦、頭脳戦を主体としている。放送局はプレミアム・ケーブル局(基本料金+追加視聴料を支払う)のShowtime(『ナース・ジャッキー』『カリフォルニケーション』)なので、セックスシーンやバイオレンスなど表現の過激さはある。だが、本作の過激さは、アメリカの“正義”に疑問を投げかけるといった、より政治的タブーに踏み込んだ点にあると言えるだろう。

2011年10月より放送が始まった本作のタイトルバックには、オバマ大統領も映し出され、劇中には政治家からビンラディンまで、実在の人物の名がそのまま登場し、ドラマは限りなく現実とリンクしている(ちなみにオバマ大統領は本作の大ファンであることを公言している)。

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