また、CIAの司令室から指示を下し、無人機での爆撃や特殊部隊が危険な現場で命懸けのミッションを遂行するシーンは、まるでゲームでもやっているような錯覚に陥ってしまう。現代の戦争とは会議室で起こっているのかと思うと、改めて底知れない恐怖を覚えずにはいられない。
本作における、こうした大掛かりな作戦遂行のシーンには、ウサマ・ビン・ラディンの捕獲・殺害ミッションを題材にした映画『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012年)のスリルとダイナミックさがあるし、本作にダイレクトにつながる1979年のイランアメリカ大使館人質事件を描いた『アルゴ』(2012年)の一触即発の緊迫感にも通じる。
また、キャリーとソールが組織から逸脱しなければ作戦が続行できない、孤独な闘いを強いられる姿は、現在公開中のスパイ小説の大家ジョン・ル・カレ原作『誰よりも狙われた男』(2013年)で描かれる現代の諜報員の活動のあり方に、非常によく似ている。いずれも、娯楽性を備えた社会派エンターテインメントの秀作なので、これらの映画が好きな人には本作を強く推したい。
中東情勢もドラマも現在進行形
『HOMELAND/ホームランド』は、終盤、主にイランが舞台となるシーズン3のラストでひとつの帰着点をみる。しかし、物語が終わることはない。いよいよもってオバマ政権を追い詰めるシリア問題からイランとの関係改善まで、最重要課題の多い中東事情を背景に、アメリカでは10月からシーズン4の放送が始った。作り手のチャレンジもまた現在進行形なのだ。
中東問題は一般的には、日本人にとってはなかなか身近に感じられない人もいるようだが、ISIS(イスラム国)に参加しようとしている日本人がいたという衝撃的なニュースもあり、以前より注目している人も少なくないのではないだろうか。知識を広げていくための取っ掛かり、入り口としても、本作はお薦めだ。
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