第6波への対応を決定的に誤らない為の政策提言 オミクロン流行を踏まえて採りうる3つの方向性

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政策Cでは、政策A・Bと比べて社会経済活動への負の影響を最小化できる。もし仮に、第6波の重症化率・致死率がこれまでの波と比べて大幅に低下しており、季節性インフルエンザの重症化率・致死率と比較可能なレベルになっているのならば、政策Cは自然な対応であり、2年間近くにも及ぶ社会経済活動の制限に苦しんでいる人々からは支持を期待できるのではないか。

新規陽性者数が非常に多くなると予想される第6波で、政策Cを採用することで、濃厚接触者の追跡調査を一時的に停止でき、入院調整が重症化リスクの高い人々だけになるため、保健所の負担を減少させることができる。また、感染者・濃厚接触者の隔離などによる社会経済・通常医療への負の影響を減少させることができる。

政策Cのリスクは以下である。

第1に、第6波における重症化率・致死率にはまだ不確実性が高いことである。重症化率・致死率があまり低くなかった場合、後に想定以上の死者数が生まれるリスクがある。しかし、このリスクは、柔軟性をもって政策対応すれば抑え込むことのできるリスクであることに留意すべきである。もし仮に重症化率・致死率が大幅に増加し始めたら、政策A・Bに軌道修正すればよい。軌道修正が間に合わないリスクはあるが、社会経済活動を継続するという利益を考えれば、そのリスクを取る価値は十分にあると判断する人々もいるであろう。

第2に、政策Bと比較すると、これまでの政策方針からの大きな変更となるため、国民からの支持に関して大きな不確実性が存在する。支持をする人も多数いるであろうが、これまでの政策からの突然の変更に戸惑う人々も多数いるかもしれない。

おわりに

本稿では、第6波の新型コロナ対策について、オミクロン株の特性、これまでの日本のコロナ対策経験、既存の研究に基づいて、3つの政策オプションを提示した。どのオプションにもメリットとリスクが存在する。これまでのコロナ政策と近いのがA・Bであり、感染者数を現状の医療体制で受け止めることが可能なレベル以下に抑えようとし、それに伴う社会経済への副作用を許容する政策である。逆に、重症化率が低いというオミクロン株の特性に応じて、医療での対応を重症化リスクの高い患者に集中することで、社会経済活動を維持するというのが政策Cである。

政策を採択する際には、いくつかの代替的な政策を検討することが重要である。何を重視して、どの政策オプションを選択するかは国民・国民に選ばれた政治家の判断である。一般の方々・政策現場の方々が、どのような第6波対応をすべきかを考える際に、われわれの論考が参考になれば幸甚である。

大竹 文雄 大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授

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おおたけ ふみお / Fumio Otake

1961年京都府生まれ。1983年京都大学経済学部卒業、1985年大阪大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。同年大阪大学経済学部助手、同社会経済研究所教授などを経て、2018年より大阪大学大学院経済学研究科教授。博士(経済学)。専門は労働経済学、行動経済学。2005年日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞、2006年エコノミスト賞(『日本の不平等』日本経済新聞社)、日本経済学会・石川賞、2008年日本学士院賞受賞。著書に『経済学的思考のセンス』『競争と公平感』『競争社会の歩き方』(いずれも中公新書)など。

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小林 慶一郎 慶応義塾大学経済学部教授

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こばやし けいいちろう / Keiichiro Kobayashi

東京大学大学院工学修士、シカゴ大学経済学博士。経済産業省、経済産業研究所、一橋大学経済研究所を経て、2013年から慶應義塾大学経済学部教授。経済産業研究所ファカルティーフェロー、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。

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仲田 泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授

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なかた たいすけ / Taisuke Nakata

米連邦準備理事会(FRB)の主任エコノミストを務めた金融政策とマクロ経済のプロフェッショナル。2020年に日本に活動拠点を移した後、新型コロナの感染と経済影響に関する試算で注目を集める。1980年生まれ、2003年シカゴ大学経済学部卒業。カンザスシティ連銀調査部からキャリアを始め、12年にニューヨーク大博士(経済学)。「社会に役立つ分析」を掲げる実践派経済学者の代表選手。

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