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第6波への対応を決定的に誤らない為の政策提言 オミクロン流行を踏まえて採りうる3つの方向性

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  • 大竹 文雄 大阪大学感染症総合教育研究拠点特任教授
  • 小林 慶一郎 慶応義塾大学経済学部教授
  • 仲田 泰祐 東京大学大学院経済学研究科 准教授
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日本では、(他国と比べて)コロナ感染者・死者数を1人減少させるためにより多くの社会経済犠牲を許容したいという価値観がある可能性が、藤井大輔・仲田泰祐他による「コロナ死亡回避の経済価値ーコロナ死者数を一人減少させるために社会としてどのくらいの経済犠牲を受け入れるかー」(2021年11月22日)で示されている。

しかし、政策Aには、次の4つのリスクがある。

第1に、既存研究のいくつかは、政策Aの感染抑制効果は限定的であることを示唆している。東京大学の渡辺努・藪友良による「Japan’s voluntary lockdown」(2021年6月10日)は、緊急事態宣言よりも感染者数で表される感染リスクに関する情報が大きな影響をあたえていたことを示した。また、一橋大学の高久玲音らの研究では、飲食店で時短要請しても、別の場所で感染リスクの高い行動を人々は取るとされている(SARS-CoV-2 Suppression and Early Closure of Bars and Restaurants : A Longitudinal Natural Experiment :2021年8月7日)。

第2に、上記した時間稼ぎによる便益は、ワクチン接種開始前と比べると現在は相対的に小さい。2回目ワクチン接種から時間が経過していることと、3回目接種がもうすぐ始まることを考慮しても、3回目のワクチン接種完了まで時間稼ぎをすることの便益は最初のワクチン接種までの時間稼ぎに比べると小さい。

ブースター接種の追加的効果は相対的には小さい

その理由は、オミクロン株の重症化率・致死率はこれまでの変異株よりもそもそも(大幅に)低い可能性が高いからである。従って、すでに低い重症化率・致死率に対する3回目ブースター接種の追加的な効果は、(アルファ株・デルタ株等に対するワクチン2回接種の効果と比べて)相対的に小さくなる。

仮に、デルタ株の未接種感染者の重症化率が1%、2回接種の重症予防効果が5割だとすれば、ワクチン接種によって重症化率は0.5%ポイント低下する。しかし、オミクロン株の未接種感染者の重症化率が0.2%、2回接種の重症予防効果がなかったとすれば、3回目接種の重症化予防効果が10割でも、重症化率の追加的な低下は0.2%ポイントにすぎない。また、ワクチン2回接種の効果は、時間が経過してもオミクロン株に対してもある程度保たれる。定量定期な不確実性はあるが、2回目接種180日を過ぎても、「感染者における重症化率」を3~6割低下させ、「感染者における致死率」は4~7割低下させるという数字が海外からは報告されている(仲田泰祐・岡本亘「第6波における重症化率・致死率:東京」2022年1月13日)。

したがって、3回目接種が近い将来本格化するまでの時間稼ぎという便益は存在するが、それは重症化率の高いデルタ株が蔓延している中でワクチン2回接種を国民の80%に行き渡らせたことから生まれた便益と比較すると相対的には小さいと言える。だとすると、ワクチン2回目接種完了後には「強い行動制限」政策の正当性は相対的に下がる。

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【現状では感染拡大抑制は集団免疫獲得先延ばしの側面が強い】

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