軍事と非軍事の境界が意味を失いつつある今、防衛装備移転と機微技術管理の制度は、重要生産・技術の国内供給源維持と移転管理という経済安全保障の目的に適した包括的な枠組みとして再設計する必要がある。
さらに、日本が持つ戦略的技術を活用する「攻め」の経済安全保障においては、この革新的両用技術を利用した日米同盟の技術協力が重要な柱の1つとなる。1月7日に行われた日米外務・防衛閣僚協議の共同声明には、「人工知能、機械学習、指向性エネルギー及び量子計算を含む重要な新興分野において、イノベーションを加速し、同盟が技術的優位性を確保するための共同の投資を追求する」と明記された。
企業がリスクやコストを負担しない枠組みが必要
これを実現する一案として、防衛装備庁に付属する次世代装備研究所をプラットフォームとし、日米共同の防衛装備・技術の研究開発組織(日本版DARPA=国防高等研究計画局)を政府として立ち上げてはどうか。いずれの分野も既存の防衛企業だけでは対応できないので、十分な予算をつけて民間企業等から広く技術者を募り、日米の官民共同を実現する。厳しい環境におかれ、中国に流出する恐れのある学者や技術者の受け皿にもなろう。企業は、先端技術の開発につきもののリスクやコストを負担せずに済む。自衛隊やアメリカ軍による試験を経て素早く実装化することも期待できる。
経済安全保障の概念は幅広く関係省庁も多いので、政府全体の協調が要る。企業や大学等の民間組織も主体的な役割を持ち、官民共同が不可欠だ。だが、軍事抜きの経済安全保障はありえない。防衛省と経産省は共同して、防衛産業を安全保障生産・技術基盤という国の基幹インフラへと発展させる必要がある。
同時に、深く染み付いた軍事アレルギーを払拭するためにも防衛産業の古い垣根を払い、優れた両用技術を有する企業へ広げ、国民の関心を高めることが重要だ。有事に国を守り、国民の命と暮らしを守る基盤の強化は、経済安全保障の要である。
(尾上 定正/アジア・パシフィック・イニシアティブ シニアフェロー、元空将)
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