日本の経済安全保障「防衛産業」の議論が欠ける訳 新興分野と一体で強い安全保障生産・技術基盤を

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宇都隆史参議院議員は、2014年3月の予算委員会で、「安全保障会議設置法の第2条3項に、防衛計画の大綱に関連する産業等の調整計画の大綱を定めると記載されているが、この産業等の調整計画の大綱は一度も国家として定められたことがない」との主旨で質問している。

これに対し、経済産業副大臣の答弁は、「産業等の調整計画の大綱について、これまで検討を行ったことはございません。作成する場合には、製造業やエネルギーを所管しております経済産業省といたしましても、他省庁と連携して取り組むことになると考えております」 と、まったく他人事であった。

当時の安倍晋三首相も、経産省だけで行える判断ではなく戦略的観点からNSCでも議論すべき問題だと述べたが、その後もまったく議論されず、放置されている。岸田文雄首相は国家安全保障戦略等の見直しを明言しているが、この放置された「産業等の調整計画の大綱」の扱いを考えなければならない。

企業の大半は防衛に無関心

防衛産業の市場規模は小さい。国の防衛予算の装備品調達費からFMS(アメリカの海外有償援助)経費を除いた約2兆円であり、防衛需要依存度(会社売り上げに占める防衛関連売り上げの比率)は平均で5%程度にすぎない。企業の大半は防衛に無関心であり、主要防衛企業においても防衛事業の扱いはせいぜい脇役か端役である。

それゆえ、政府は防衛産業に注意を払わずにきた。さらに、企業には防衛事業に対するさまざまな否定的感覚がある。その背景には国民の「軍事」に対する忌避感がある。この影響の強さは、日本学術会議による大学の防衛分野への研究協力の拒否や移転三原則の実状を見ても明らかだ。

その根源は、憲法9条2項による「その他の戦力(other war potential)」の不保持と占領軍による軍事産業の禁止政策まで遡るので、根は深い。しかしながら、安全保障のすそ野は大きく広がり、今後の軍事のあり方を変革するゲームチェンジャー(革新的技術)の大半はDual Use Technology(軍民両用技術)になり、三原則で厳しく規制される「防衛装備」、即ち「武器」および「武器技術」以上に適切な管理が必要とされている。

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