スノボ五輪メダリストが明かす「卵子凍結」の理由 「出産した選手へのサポートがもっと必要だ」

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竹内さんは今、スノーボードの国際アスリート委員会を通じて、怪我をした選手同様に出産した選手にもFISポイントの凍結が適用されるよう提案を行っている。

「知人の選手たちと話をする中で、『出産した選手へのサポートがもっと必要だ』という意見が一致して、昨年5月頃に委員会に提案しました。ただ、それが受け入れられてもポイントシステムを再構築したり、変更しなければならないので、早くても1~2年はかかるはずです。

ただ、こういうアクションをとらなければ、私たちの種目においては出産からの第一線復帰はかなりハードルが高く、オリンピックを目指すのも難しい。これからの世代のためにも、声を上げ続けなければいけないのだと思います」

3シーズンぶりに競技に復帰した昨季、竹内さんはいきなりW杯初戦で8位に入賞。21年2月のW杯ロシア大会では3位を勝ち取り、表彰台に上がった。

(写真:赤松洋太)

「初戦でのベスト8は、自分でも想像していませんでした。競技に復帰した直後は、荷造りして遠征に行くのも、スタート地点の緊張感も、全てが新鮮。新たな競技人生がスタートしたような感覚で、タイムを少しずつ縮めていく過程は、まるでジュニア時代や20代前半の頃のようで、初心に戻ったような気分でした。

今は、これまでに蓄積してきた経験と、復帰後に手にした初々しい感覚、その二つがいいバランスでコラボしている状態です」

竹内さんが描く、これからのビジョン

そんな竹内さんが描く、これからのビジョンは「基本的にはノープラン」だという。

「一つ一つ、目の前の課題に取り組んで、今の生活を楽しんで続けていけば、自然と『次』が見えてくるんじゃないかなと思います」

競技に打ち込むにあたり、卵子凍結を選択した竹内さん。「自分の本音」に向き合う時間を得られたからこそ、納得のいく決断ができるようになった。「今は全力で競技に打ち込む」と決めた彼女が再び表彰台に立つ日が楽しみだ。

取材・文/モリエミサキ 撮影/赤松洋太

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『Woman type』編集部

「Woman type」は、キャリアデザインセンターが運営する情報サイト。「キャリア」と「食」をテーマに、働く女性の“これから”をもっと楽しくするための毎日のちょっとしたチャレンジをプロデュースしている。

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