商品開発のために「部活」を作った永谷園の深い訳 名物クリエイティブディレクターの頭の中

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このカップスープはその後、ドリンク開発にもつながり、目標の250%を売り上げ、ビジネス的にも成功するのですが、これをきっかけに社内で盛り上がったのが「生姜といえば永谷園」ということをもっと印象づけたい、ということでした。

もちろん、そう印象づけるには、大変な投資が必要になります。しかし、企業の本当の姿勢というのは、いずれ透けて見えていくと私たちは感じていました。だから、もし「生姜といえば永谷園」と本気で思われたいなら、企業としてきちんと取り組むべきだという提案をしたのです。

こうしてできたのが、試験農場でした。

永谷園生姜部

千葉の山武市に生姜の農場を作ってしまったのです。そこに社員が大勢やってきて、みんなで生姜を植える。終わった後は、駅前で社長から若手社員まで入り混じっての大宴会をする。

この様子がまるで部活のように見えたので「生姜部という組織にしましょう」と提案をしました。こうしてできたのが、社内横断の組織、「永谷園生姜部」です。生姜部では、自分たちでレシピを開発したり、動画を作ったり、ブログや本を作ったり、PRを推し進めていきました。新たな商品化が行われたり、CMが作られたり、いろいろな取り組みも行われました。

生姜部の試験農場(写真:筆者提供)

生姜部は10年以上にわたって活動をした後、現在休止していますが、社内のバーチャル組織として、いろいろな部門を横断したチームができたことは、永谷園にとって大きな価値につながったようです。プロモーションの相談が、組織づくりにまで広がっていった実例でした。

ビジネスの下流だけではなく、上流から発想してみる。そうすることで、生まれてくる課題解決の仮説もあるのです。

齋藤 太郎 コミュニケーション・デザイナー/クリエイティブディレクター

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さいとう たろう / Taro Saito

慶應義塾大学SFC卒。電通入社後、10年の勤務を経て、2005年に「文化と価値の創造」を生業とする会社dofを設立。企業スローガンは「なんとかする会社。」。ナショナルクライアントからスタートアップ企業まで、経営戦略、事業戦略、製品・サービス開発、マーケティング戦略立案、メディアプランニング、クリエイティブの最終アウトプットに至るまで、川上から川下まで「課題解決」を主眼とした提案を得意とする。サントリー「角ハイボール」のブランディングには立ち上げから携わり現在15年目を迎える。

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