商品開発のために「部活」を作った永谷園の深い訳 名物クリエイティブディレクターの頭の中

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しかし、流通がスーパー中心で、顧客が主婦を中心にどんどんシニア化していく中、社内には危機感がありました。そこで「あたらしい永谷園」を考えたいということで、私たちの会社に声がかかったのです。永谷園には「味ひとすじ」という企業理念がありますが、そのプラスアルファとしての新しい取り組みがほしい、という掛け声でプロジェクトがスタートしました。

「『冷え知らず』さんの生姜シリーズ」の誕生

当時はまだ30代前半だった女性社員をリーダーに、新しい商品開発が進められることになりました。当時の彼女曰く、「入社してから、自分のためと思える商品が一つもなかった」そうで、30代の女性である自分が欲しくなるような商品がいい、と考えました。

プロジェクトのキックオフのときに、クリエイティブディレクターをつとめる大島征夫さんが、「信じられるものを。」というキーワードを掲げました。これがプロジェクトを進行するうえでの約束事、旗印となりました。若い女性をターゲットにした、怪しげなダイエット商品などもたくさんある中で、永谷園が開発するべきものは何なのか。企業理念として「味ひとすじ」を掲げ、これまで美味しくて、リーズナブルなものを届け続けてきた永谷園が、次のチャレンジをする際の拠り所として、お客さまに信頼してもらえる、信じてもらえる商品開発をしようというキーワードを掲げたのです。

そして、ターゲット女性の意識調査などをして見つかった悩みが「冷え」であり、そこから生まれた商品が、「『冷え知らず』さんの生姜シリーズ」というカップスープです。展開するのは、新しい流通としてのコンビニ。広告はやらない、という前提でしたので、当時はまだ珍しかった白いパッケージを店頭で映えるという理由から採用。ターゲットである女性を意識した商品であることを、店頭で3秒で判断してもらおうと考えました。

「冷え知らず」さんの生姜シリーズ(写真:筆者提供)

今も売られていますが、スペックがすぐわかり、ネーミングもブランドとして機能できるものになっています。

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