商品開発のために「部活」を作った永谷園の深い訳 名物クリエイティブディレクターの頭の中

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広告だけで達成できることには限界があります。だから、広告やプロモーションを考える前に、プロダクトだったり、会社の組織だったり、売り方の仕組みについて考えていく必要がある。そのためには、より上流にいるクライアントも巻き込んで、一緒に考え、行動をしていく必要があるのです。

マーケティングはお金で解決できる側面が一部あります。お金があれば広告は打てるし、CMだって打てる。しかし、それが砂漠に水を撒くようなものになる可能性だってある。一方で、上流の問題は、社内のリソースを使ったり、何かを開発したりする、ということが必要になり、お金を払っても解決できないハードルがたくさん出てきます。はっきり言って、これを越えるほうが大変です。

でも大事なことは、そこから逃げてしまわないこと。乗り越えなくてはならない困難や面倒があっても、上流まで遡り、そこで知恵を絞り、汗をかき、手を打ち続けないと、本当の課題解決はできないのです。

課題解決のために「部活」を作った永谷園

私たちが手がけた印象深い案件として、永谷園の「『冷え知らず』さんの生姜シリーズ」というカップスープのブランディングがあります。スーパーやコンビニエンスストアで目にしたり、手に取ったことがある人もいるかもしれません。商品開発から携わり、マーケティング展開のお手伝いまでしました。

永谷園はお茶漬けやふりかけが有名ですが、もともと京都で製茶業を行っていました。その後、東京の愛宕下にお茶の店を構え、さまざまな商品を開発しお店で販売していました。その中で出てきた画期的な商品が、お茶漬けでした。

お茶漬けというのは昔は料亭でしか食べられず、かなり高級なものだったのですが、おいしかったそうです。そこで、このおいしいお茶漬けを多くの人が手軽に食べられるようにしたいというところから発想されたのが大ヒット商品となった「永谷園のお茶づけ海苔」だったのです。

その後も、具材を用意し作るのが大変だったチラシ寿司を温かいご飯に混ぜるだけで簡単に作れるようにした「すし太郎」や、会社に出社せず、日本だけではなく世界各地を新商品開発を行うために渡り歩いたぶらぶら社員が開発した「麻婆春雨」など、ユニークな商品を作ってきました(麻婆春雨は中華料理の定番ですが、元々は永谷園が生み出したメニューです)。

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