これまでのデフレ不況が日本経済を蝕んできた例として、2012年まで日本銀行の金融政策運営でデフレが長期化していたため、日本社会が不安定化し、さらには経済成長の礎となる人的資本が毀損されてきた例をここで紹介したい。
デフレは、若者世代への「経済的虐待」である
文部科学省の調査によれば、平成24年度(アベノミクスが始まる直前)に大学などを中退した若者は約8万人と、全学生に占める割合は2.65%に増加した。
5年前の調査から0.2%と僅かな上昇に見えるが、学生が中退した理由としては「経済的理由」が、20.4%と5年前から6.4ポイントも増加した。同省によれば、「家庭の経済状況の厳しさだけでなく、将来の返済への不安から奨学金の利用をためらっている様子もうかがえる」とのことである。
ただでさえデフレ不況が始まり、就職氷河期が恒常化していたわけだが、就職活動に入るその前段階において、不況による金銭的な事情から卒業を諦めざるを得ない若者が増えていたわけだ。こうした若者は、残念ながら、スキルを身に着ける職につくチャンスを得ることが難しくなってしまう。
長期の経済成長率は、人的資本がもたらす技術革新の影響が大きく左右する。これまで、デフレ不況が長引いたことで、就業の機会が狭くなりスキルを高めることができない労働者が増えた結果、日本経済は長期的な経済成長率を低下させかねない状況になっていた。
こうした意味で、デフレは若者世代への「経済的虐待」だが、デフレと低成長(=「人余り」の長期化)からの脱却をしっかりと実現することが、長期的な観点からみても日本経済再生の第一歩になる。
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