先進国で所得格差が広がっていることが、大きな話題になっている。
ピケティの「21世紀の資本論」は、600ページ近い大著で、しかも一般書とは言いがたい内容だ。それにもかかわらず、英語版はインターネットの通販サイトAmazonでビジネス書のベストセラーになったそうだ。税務統計を使ったデータから所得と資産の分配に関する分析を行い、資産格差が所得格差を生み、それがまた資産格差を拡大させる、という格差拡大のメカニズムを示した。欧州の格差は、第1次世界大戦から1970年代までの間に縮小したが、1980年以降は再び拡大して100年前の状態に近づいているという指摘は、世界中で議論を呼んでいる。
5月にはOECDが、ほとんどのOECD加盟国で、過去30年間に最も豊かな1%の人たちの税引き前所得の割合が上昇したという報告書を提出した。最も上昇が著しいのは米国で、上位1%の人たちの所得は1981年には全体の8.2%だったが、2012年には倍以上の20%に達している。上昇は英国、カナダ、オーストラリアなど英語圏の国で大きい(図1)。
上位1%への所得の集中は、リーマンショック直後には若干改善したが、先進国経済が回復すると、再び集中の動きが目立っている。日本はOECD諸国の中では、所得集中の度合いは、ほぼ中央に位置していると言ってよいだろう。
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