同じ所得格差の拡大でも、欧州と米国とでは格差が生まれる仕組みが多少異なっている。
欧州ではストック、米国ではフローに原因
欧州ではそれぞれの世帯が保有している資産額に大きな格差があって、資産から生まれる財産所得の格差が毎年の所得の格差を生んでいる。
ピケティは、フランスの場合には1914年ころから第2次世界大戦直後まで、2度にわたる大戦や大恐慌による企業の経営破綻、第二次世界大戦後に行われた大企業の国有化で高額所得者の財産所得が減少したことが急速な所得格差の縮小の主因だとしている。
しかし、歴史的に見れば資本収益率は経済成長率を上回っているのが常態だと指摘しており、このとおりならば、経済が発展していくと富を持つものはますます豊かになり、働くことではなかなか豊かになれないという問題が深刻化していくおそれがある。
これに対して、米国ではトップの企業経営者や金融専門家が著しく高額の所得を得ることで所得の格差が生まれている。保有している資産から得られる財産所得だけではなく、経営能力によるところもある。たとえばFacebookのザッカーバーグや、Appleのジョブズといったスーパースター経営者たちだ。米国の高額所得者の職業を見ると、1979年から2005年の間に非金融企業の経営者の割合は若干減少し、金融業や不動産業の経営者の割合が上昇している(図2)。
グローバル化の動きが、金融業や優秀な企業経営者の価値を高め所得を高いものにしたという考え方もあるが、国によって所得格差に大きな差があることは、それぞれの社会の格差に対する考え方の違いが大きく影響していることを示唆している。
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