スタグフレーションと言うが、4月からインフレ率が表面上高まっているのは、消費増税を行ったためである。それは政府部門が民間から大規模なマネーを吸い上げる成長抑圧策で、家計の実質賃金が大幅に目減りし、個人消費を中心に成長が落ち込んだということである。
なお、金融緩和を起点に2013年の景気回復が波及し、2014年になって名目賃金は順調に伸び始めていたが、3%の消費増税のインパクトが大きすぎたので、実質ベースの賃金は大きく減少してしまった。
世界標準のインフレを好まない、「目に見えない声」
スタグフレーションとは、金融、財政政策により景気が過熱し過ぎて、インフレ率が加速し、それが企業や家計の経済活動を委縮させ成長率が停滞する状況である。
インフレ目標を実現できず、かつ脱デフレの途上にある日本経済はそのような状況とはほど遠い。つまり、今の日本経済の状況を表す言葉として、スタグフレーションは、用語の使い方として間違っているという、そもそもの問題がある。
メディアでスタグフレーションが誤用されているのは、金融緩和によってインフレ率が世界標準の伸びに上昇することを好まない、「目に見えない声」があるためだ。インフレという自然な経済現象を暗に批判する、「印象操作」として使われているのである。
2013年に日本銀行の体制が変わり金融緩和が強化されたが、このままスムーズに日本経済がデフレから抜け出し失業率が下がり続けると、都合が良くない方が極々一部だが存在しているようにみえる。デフレとは、政策の不作為がもたらした人為的な病だが、この日本経済の病巣は非常に根深い。
インフレを好まない、目に見えない声がマスメディア等を通じてなお無視できない力を持っていることを、投資家は冷静に認識し、スタグフレーションなどという言葉に惑わされないことが重要である。
そして、経済成長を逆噴射させる政策対応は時期尚早で、仮に政策対応の不出来が続けば、再び景気停滞とデフレに舞い戻り、そして財政赤字と公的債務が再び増えるという、最悪シナリオすら想定できることを、頭の片隅に置いておきたい。
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