――CfDでは、原発の基準価格(買取価格)がもし電力の市場価格を下回れば、電気料金の値下げなどで消費者に還元されるとしている。
本当にそうなるのならば、このような制度は必要ない。事業者としては、市場価格のほうが高いのならば、電気をすべて市場で売ったほうが儲かるからだ。もちろん、市場価格は動くので、一時的には市場価格のほうが上回る可能性はあるが、原発の基準価格は市場価格よりも当然、上に来ることが想定される。
原発新設を決めてないのに支援策だけ出る矛盾
――英国のCfDは新設原発を対象としているが、日本では現状、「原発の新増設、リプレース(老朽原発の建て替え)はまったく想定していない」というのが政府方針だ(ただし、建設中にある電源開発の大間原発やほぼ完成済みの中国電力・島根原発3号機は新増設に当たらないとの政府見解)。
英国のCfDはあくまで新設の原発を対象としたものだ。原発を推進するという国是があったうえで、原発新設のためにCfDという手段が出てきた。日本ではまだ原発を新設するのかどうか決まっていない状況で、こうした支援策の話が出てくるのはおかしい。(今はまだ下限値しか出していない)コストをしっかり検証し、新増設を含めた原発の位置づけをもっと明らかにしたうえで、議論すべきだ。
――既設の原発にまでCfDを適用するとしたらどうですか。
エネ庁の腹積もりは正確にはわからないが、もし既設の原発にまで導入するとしたら驚きだ。
――CfDは、原発が高コストであることを結果的に裏付けることになる。
これまで「原発はコストが安い」ことを主な理由として、経済界も原発推進を支持してきたが、その根拠が崩壊してしまうことになる。
――政府はすでに、廃炉になる原発の会計制度も見直して、支援することを決めている。
すでに運転開始から30年以上経っている原発を廃炉にする際にも(一括減損ではなく)多年度の減価償却を認めて支援するというのは、これも本来おかしな話だ。海外では平均すれば二十数年で廃炉になっており、30年以上経っているならば本来、設備の償却は終わっていてもいいはずだ。それが終わっていないからといって、減価償却にして電気料金に転嫁するというのはいかがなものか。
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