儲け主義と無縁の神宮にカープ女子の恩恵 12球団のホームグラウンドへ行ってみた<10>

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ビールの売り子にもプラス評価をあげたい。ビールの売り子はこの球場に限らず、どこの球場も総じて極めて優秀だ。とにかくほぼ例外なくコミュニケーション能力が高い。担いでいるタンクは満タン状態で13㎏だそうで、あれを担いで階段を元気よく上り下りしているのだ。

特に神宮、西武、QVCマリンでは空いているので、売り子を決めた指名買いがしやすい。混んでいると売り子も忙しいので、「また回って来てくれ」と言っても難しい。

観客8%増はカープ女子大増殖の恩恵?

ヤクルトは昨シーズン、突如観客動員数が前年比で8%も伸びた。筆者
はそれはほぼカープ女子大増殖の恩恵だと思っている。球団も修学旅行生
の誘致などで頑張ってはいるが、実際のところ1塁側の空き具合はさほど
変わっていない。だが、カープファンが陣取る広島戦の3塁側は、一昨年
のシーズン後半あたりからすごい勢いで観客が増えている。

神宮は総じてダメな球場だが、筆者にとっては長年慣れ親しんだホームグラウンド。今は他の球場から5周半くらい遅れている感じだが、少し前までは10周くらい遅れていた。他球場を手本に是非とも頑張って欲しいと思う一方で、このぬるさがこの球場の良さだったりもするのだ。

最後に、この球場を訪れた人が必ず持つ疑問に答えておきたい。なぜこの球場は広告看板が極端に少ないのか--。本連載は基本的に球団や球場にはモノを聞かない方針を貫いているが、これだけは聞かないとわからない。

神宮球場は明治神宮の所有で、球団は単なる店子だ。飲食収入も看板収入も全て明治神宮のもの。そこで球場に問い合わせてみたところ、どうやら構造上難しいということの様なのだが、印象としては、看板を設置出来る方法がないか必死に考える努力はしていない、といったところ。

内外野にはフェンスの内側にポールがにょきにょき立っているが、いずれも防球ネットを支える程度の強度でしかない。タフマンやミルミルの看板は、3本の強固な鉄柱を外周部の地面から直接立ててその上に設置している。

スコアボードの左右のマイナビの広告スペースになっているところは、以前は全員の打率が載っていたスペースだし、時計の左右も今は広告主がいないが、実は広告スペース。ベンチの屋根が広告スペースになったのもこの10年ほど。出来そうなところを少しずつ広告スペースにしてはいる様だが、抜本的な設備投資はまるで考えていない様だ。

折しも東京五輪を控え、秩父宮ラグビー場ともども建て替え計画がささやかれる。頑張る必要を全く感じていないということなのだろう。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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