隠れたネットの巨人、リクルートのジレンマ

迫り来る「破壊的イノベーション」への危機感

とはいえ、リクルートが紙の媒体を減らし、ネットメディアを増やし始めたとき、紙媒体と同じ規模の売り上げを出せず、リクルートの売り上げは落ちるのでは、という声も少なくなかった。

なぜリクルートは、ネットに移行した後も事業規模を拡大できているのか。筆者は、成功の要因は6点あると考えている。

(1)ネットだからといって、安売りしない

通常、紙からネットに媒体が変わると、広告単価が下がることが多い。ところが、リクルートは違った。紙と同じレベルの単価を維持したのだ。

「ゼクシィがゼクシィネットに変わったところで、クライアントにとって予約1件数は1件。われわれはその価格を知っているので、クライアントに対して交渉力があった。固定概念では、紙とネットの比較だと下がりそうだが、われわれは過去からの連続でやっているので、強く交渉できたのかもしれない」と今村氏は話す。

まさにリボン図のクライアント側から見て、1件を成約できれば、その媒体が何であろうと関係ないわけだ。

(2)競合より多いデータで、営業マンが“理詰め”で店と交渉する

リクルートには、「渋谷に店を置く、ある単価水準の居酒屋の場合だと、何人集客できる」といった見込みのデータが、過去の実績から豊富にそろっている。そのため、営業マンはそのデータを基に、説得力を持って居酒屋に広告費の説明ができる。各領域で、ナンバーワンクラスのシェアを取っていることも、ネットへ移行できた背景にある。予測ができるほどのデータを持っている強みが発揮された。

(3)販売オプションを有効に使う

紙の時代は、1ページ増やせば当然、原価が上がるが、ネットの場合、原価はさほど変わらない。そのため、ネット化以降は、既存のクライアントに対しても、オプション提案をしやすくなった。オプションという扱いで、より広告価値の高い提案をできるようになったのだ。

(4)ロングテールで客層が広がる

媒体がネットに移行したことで、お店自らがネット経由で広告掲載を申し込めるようなり、これまで営業マンがリーチできなかった店舗にまでクライアントが広がった。クライアントの裾野が広がった分、売り上げが伸びたのも大きい。

(5)サイトの使いやすさをトライ&エラーで追求

サイトの使い勝手について、ABテストを繰り返し、つねに改善し続けてきた。ABテストとは、ボタン画像や説明文などを複数パターン用意し、ユーザーの導線やコンバージョン率がどう変わるか比較するもの。これは、ネット業界なら当然の施策としても、あのリクルートがそこまで科学的に検証をして、サイトを成長させてきたことを知らない人も多いだろう。

なお、リクルートは、2012年10月に世界最大級の求人検索サイトを運営する米Indeed社を完全子会社化しているが、これにより、世界トップレベルのサイト開発の手法を学べるようになった。今後は、Indeed流のエンジニア主導のサイクルの早いABテストの手法、システムの組み方、インフラなども取り入れて、サービスの強化に生かしていくことになる。

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