隠れたネットの巨人、リクルートのジレンマ 迫り来る「破壊的イノベーション」への危機感

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(6)ビッグデータ分析で、マッチング率の向上

データを分析・活用し、どれだけマッチングの精度を高められるか。リクルートは、国内でもいち早くビッグデータ分析に本格的に取り組んだ企業のひとつだ。過去の利用者の履歴などを基に、たとえば、一人ひとりの好みに合ったおすすめの宿泊情報、物件情報などを提供し、予約や成約などのコンバージョン率を上げている。

なお、今後は、事業別のデータ分析に加えて、事業横断のデータ分析にも取り組み、強化していく。「じゃらんネット」「ポンパレ」などをひとつの会員IDに統一したため、幅広いサービスを横断した巨大データを活用できるようになる。会員一人ひとりのより深い分析に生かせる。

迫る破壊的な競合たち

では、今後もリクルートはITの分野で勝ち続けられるのか。

「当然だが、簡単に勝てるとは思っていない。(リクルートの既存事業領域を脅かす)“破壊的な競合”は、グローバルレベルでどんどん出てくる。危機感を持っている。いつ大波がくるかわからない」と今村氏は警戒心をあらわにする。

ハーバード・ビジネス・スクール教授、クレイトン・クリステンセンが提唱し一世を風靡した「イノベーションのジレンマ」。まさにリクルートは「イノベーションのジレンマ」に陥ることをおそれているのだ。

イノベーションのジレンマとは、顧客の声に耳を傾け、製品・サービスの向上を持続的に続ける優良企業が、既存の事業構造を破壊するような新興企業の新技術・新サービスの成長に直面し、衰退してしまうという考え方だ。たとえば、過去にはコダックのような優良企業が、デジタルカメラの登場によって、フィルム事業の壊滅的な縮小を余儀なくされている。

ネット化に成功したかに見えるリクルートにとっても、無関係とはいえない。

グローバルネット企業の侵攻、そして、ネットベンチャー企業の台頭。新興勢力は、リクルートのような巨大な営業網を持たない代わりに、ソーシャルメディア、口コミ、キュレーションなどの新しい価値をユーザーに提供し、次々と新サービスを生み出している。いずれもリクルートにとって、破壊的競合になりうる。

紙とネットの融合にも成功した“隠れたネットの巨人”リクルート。リクルートは、イノベーションのジレンマの先に何を見て、どう変わろうとしているのか。次回、その謎に迫る。

※次回は10月10日(金)に公開予定です

(撮影:大澤誠、尾形文繁)
 

松浦 由美子 ITアナリスト

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まつうら ゆみこ / Yumiko Matsuura

ITアナリスト。

ITエンジニアとして半導体ウェハ検査装置の開発や原子力・ETCなどのインフラ制御系システムの開発、大手印刷会社のIT技術センター部門でセキュリティ関連のサービスや画像情報データベース、地図情報サービスなどのWeb開発に携わる。現在は、「ITからリアル世界への翻訳者」として、テクニカルな話題を一般読者にわかりやすく解説することをモットーに活動中。

著書に『O2O 新・消費革命 ネットで客を店舗へ引きつける』(東洋経済新報社、 2012.10)、『O2O、ビッグデータでお客を呼び込め!- ネットとリアル店舗連携の最前線』(平凡社新書、2014.1)、東洋経済オンラインにて「O2O ビジネス最前線」を連載中。

テレビのニュース番組やラジオ、講演など「O2O」に関する出演多数。
連絡先:松浦由美子公式ページ

 

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