データを分析・活用し、どれだけマッチングの精度を高められるか。リクルートは、国内でもいち早くビッグデータ分析に本格的に取り組んだ企業のひとつだ。過去の利用者の履歴などを基に、たとえば、一人ひとりの好みに合ったおすすめの宿泊情報、物件情報などを提供し、予約や成約などのコンバージョン率を上げている。
なお、今後は、事業別のデータ分析に加えて、事業横断のデータ分析にも取り組み、強化していく。「じゃらんネット」「ポンパレ」などをひとつの会員IDに統一したため、幅広いサービスを横断した巨大データを活用できるようになる。会員一人ひとりのより深い分析に生かせる。
迫る破壊的な競合たち
では、今後もリクルートはITの分野で勝ち続けられるのか。
「当然だが、簡単に勝てるとは思っていない。(リクルートの既存事業領域を脅かす)“破壊的な競合”は、グローバルレベルでどんどん出てくる。危機感を持っている。いつ大波がくるかわからない」と今村氏は警戒心をあらわにする。
ハーバード・ビジネス・スクール教授、クレイトン・クリステンセンが提唱し一世を風靡した「イノベーションのジレンマ」。まさにリクルートは「イノベーションのジレンマ」に陥ることをおそれているのだ。
イノベーションのジレンマとは、顧客の声に耳を傾け、製品・サービスの向上を持続的に続ける優良企業が、既存の事業構造を破壊するような新興企業の新技術・新サービスの成長に直面し、衰退してしまうという考え方だ。たとえば、過去にはコダックのような優良企業が、デジタルカメラの登場によって、フィルム事業の壊滅的な縮小を余儀なくされている。
ネット化に成功したかに見えるリクルートにとっても、無関係とはいえない。
グローバルネット企業の侵攻、そして、ネットベンチャー企業の台頭。新興勢力は、リクルートのような巨大な営業網を持たない代わりに、ソーシャルメディア、口コミ、キュレーションなどの新しい価値をユーザーに提供し、次々と新サービスを生み出している。いずれもリクルートにとって、破壊的競合になりうる。
紙とネットの融合にも成功した“隠れたネットの巨人”リクルート。リクルートは、イノベーションのジレンマの先に何を見て、どう変わろうとしているのか。次回、その謎に迫る。
※次回は10月10日(金)に公開予定です
(撮影:大澤誠、尾形文繁)
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