隠れたネットの巨人、リクルートのジレンマ 迫り来る「破壊的イノベーション」への危機感

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株式上場の熱狂の裏でリクルートが直面しているジレンマとは(写真は今村健一人事統括室室長)

「IT人材を300名採用して2015年4月までには1000名体制にしたい」

リクルートホールディングスで人事・組織戦略の責任者を務める今村健一・人事統括室室長氏は力を込めた。

筆者の目の前に現れた今村氏自身、ジャケットを脱ぎ去り、エンジニアが愛用する黒いパーカーを身にまとっていた。エンジニアの人材強化を自ら強調するかのように――。

2014年3月期の連結売上高が過去最高の1兆1915億円、営業利益は1174億円に上り、今年10月16日に株式上場するリクルート。順風満帆にみえるリクルートに今、何が起っているのか。

本短期連載では、リクルートの「IT化」「グローバル化」への挑戦、そして、巨人・リクルートが抱える“ジレンマ”を集中レポートしていく。第1回ではその「隠れたネットの巨人」の本質に迫る。

実はサイバーエージェント、DeNAを陵駕

「第2創業に近い転換をしなくてはいけない」(今村氏)。

1960年の故江副浩正氏の会社創業が第1の創業だとすれば、1988年のリクルート事件からの復活が第2創業。「IT化」「グローバル化」を前面に打ち出したグローバルネット企業への変貌は、第3創業とも位置づけられる。経営、組織、企業文化も、大きく変わろうとしている。その第1歩がIT化だ。

「紙からビジネスを始め、ネットに軸足を変えた後も、継続的に成長を続けている企業はおそらくどこにもなかった。リクルートが世界初」。リクルートホールディングス社長の峰岸真澄氏は、こう2年前に発言している(2012年6月「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット」)。

世界初かどうかは別としても、紙の情報誌からビジネスを始めたリクルートは早くからネット化の道を歩んでいた。そして今、リクルートはネットの巨人と言って差し支えない。

論より証拠。数字に語ってもらおう。

2012年3月期のメディア別売上構成比によると、有料誌、フリーペーパー、ネット・モバイルのうち、ネット・モバイルがすでに46.7%を占めていた。株式会社リクルート(旧)時代の単体売上高は約3720億円。当時、すでに約1737億円がネット・モバイルでの売り上げだったことがわかる。

ちなみに、国内ネット広告代理店のトップ、サイバーエージェントの2012年9月期の連結売上高は約1411億円、ゲーム事業を主力とするDeNAの2012年3月期の連結売上高は、約1465億円だった。当時、リクルートのネット事業の売上高は、すでにサイバーエージェント、DeNAの売り上げを凌駕するほどの規模にあったことになる。

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