「街コンで結婚」はなぜ難しいのか? 「月9」史上初めて視聴率1ケタ台を記録したドラマを振り返る

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住民の福利厚生としての婚活

だから、本気で婚活を応援しようとする地域は別の種類の婚活イベントを用意することになる。その多くは地方自治体が関与する、人口対策を主眼に置くものだ。漁師男性のパートナー選びを目的とした三重県鳥羽市、グリーンツーリズムを利用する長野県飯山市など、域内男性と域外女性とのマッチングによって人口流出を抑え、むしろ人口流入を促そうとするのは典型例だろう。

とはいっても、地域による婚活イベントのうち市町村レベルで行われるものはむしろ少数派で、多くは都道府県レベルで行われている。これらは当該都道府県における在住・在勤者を対象とすることで地域の未婚率を改善させ、少子化に歯止めをかけようとするものだ。

けれど、このような域内住民を対象とする婚活支援政策の人口対策としての効果は極めて低い。理由は簡単で、限られた予算の中での婚活支援では規模が小さすぎるのだ。頑張って成婚させても、同数のカップルが域外に流出すれば相殺されてしまう。人口対策としては、むしろカップルの流出を抑えるための政策、つまり住居・育児・教育の整備のほうがよっぽど効率的だ。

というわけで、域内住民のマッチングという婚活支援政策には、予算をつけるだけの費用対効果がない。これから地方自治体の婚活イベントが残るなら、先に見た鳥羽市のように、地場産業に就労して流出しない人口(主として男性だろうが)へのマッチングくらいのものだろう。つまり、人口対策というより住民の福利厚生としての婚活だ。

こうした婚活イベントと比較すると、街コンの意味はもっとハッキリしてくる。地方自治体主導の婚活イベントが小規模で確実性の高いものなのと比べると、街コンはむしろ大規模性やエンターテインメント性を重視したイベントなのだ。だからこそ、よく指摘されるように、街コンは参加のハードルが低く、婚活としては入門的って位置付けがなされるのだ。

婚活のために街コンに出かけたはずの後輩が、まるで観光してきたかのような土産話をしていても、ぜひ、「街コンを堪能してきたんだ」って目を細めてあげてくださいね。
 

「週刊東洋経済」2014/9/13号:クスリの裏側

榛原 赤人
はいばら あかひと / Akahito Haibara

1988年生まれ。都内某大学院の社会科学分野博士課程に在籍。17歳の頃から結婚をめぐるもろもろに関心を持ち、婚活ブーム以降は、その思想的背景に注目して、机上での結婚探求を行っている。
 

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