ありのままは相手にされず、磨きすぎは怖い 今こそもう一度「自分磨き論」を考える

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自己満足になってしまった自分磨きは、重い

「消費メディアにあおられて自分磨きばかりしていると、むしろ磨きすぎて相手がいなくなる。よく磨きすぎた日本刀って、近寄るだけで、触ってないのに斬られるっていうじゃないですか。磨きすぎて、名刀どころか妖刀になってる可能性があるなと(笑)」

これは『女子会2・0』(「ジレンマ+」編集部編、2013年)における詩人、社会学者の水無田気流のセリフだけれど、自分磨きがいつの間にか自己満足に なってしまって相手(特に男性)から重く感じられてしまう、という図式は、今では見慣れたものになった。でも、こうした自分磨き批判が普及したこと自体 が、自分磨きブームがそれだけ強力だった証しだ。

いつか幸せになるために自分をどう磨く?

婚活ブームの火付け役になった社会学者の山田昌弘やジャーナリストの白河桃子が『「婚活」症候群』(2013年)の中で後悔しているように、「婚活」は、結婚相手の基準を引き下げることよりも、むしろ高水準の相手を捕らえるための活動として社会に受け止められた。

たとえば、婚活ブーム以前からそれを実践してきた結婚相談所。それらは基本的にマッチングのための機関だけれど、そこで年収が高い男性、キレイな女性に人気が集まるのは動かぬ現実だ。そんな状況を目の前にして、自分のプロフィールを少しでもよくしたいって思うのは人情ってもんじゃないだろうか。せめて、ステキな資格があったほうがいい。料理はできないよりできたほうがいい。こうして婚活と自分磨きとは容易に結び付く。

実際、プロフィールがよければよりどりみどりという感覚は一般に共有されていた。たとえば、2009年のドラマ「婚カツ!」。このドラマの中で婚活を体現するのは釈由美子演じる村瀬優子だが、彼女は「三高」(高収入、高学歴、高身長)を求める肉食系女性として描かれる。三高だけじゃない。当時のウェブサイトで公開されていた釈のインタビューにはこんな証言があった。

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