『恋するリベラーチェ』 予告編
これまでに映画界に多大な貢献をしてきたソダーバーグは、本作の発表を最後に長編映画監督からは引退することを宣言した。
ソダーバーグが引退を公に語ったのは、2011年のこと。だが、当時は『恋するリベラーチェ』と、結局、流れてしまったもう1本の映画の企画を抱えており、まだ少し未練があるような口ぶりだったため、そこまで真剣には受け止められなかった。俳優でもそうだが、売れっ子がマスコミに語る「もう引退したいよ」は、「少し休みたい」と同義語のようなケースも多々あるからだ。
だが、ソダーバーグは本気だった。理由はもちろん、ひとつではないだろう。「疲れた」というのも本音だろうし、「他のアートを追及してみたい」とも語っていた。だが、昨年のサンフランシスコ国際映画祭で行ったレクチャーでは、映画スタジオのシステムと映画について、さらにインディペンデント映画の役割などについて語り、はっきりと現在の映画界における問題点を指摘している。
もともと、ソダーバーグはインディペンデントの雄だった。1989年に『セックスと嘘とビデオテープ』で世に登場したとき、その才能は、驚きをもって世界に迎えられた。その後は低迷したが、メジャー・スタジオ(大手映画会社)の映画『アウト・オブ・サイト』(1998年)を手がけてスマッシュヒットを記録。そこから、『エリン・ブロコビッチ』と『トラフィック』、そして動くスター図鑑『オーシャンズ11』で大ヒットを飛ばす一方で、商業ベースには乗らない実験的、野心的な作品もコンスタントに挑戦し続けてきた。
引退をほのめかした当初は、「おカネがなくなったら『オーシャンズ』シリーズの続編を作るよ」などと発言していたところをみると、作品の良し悪しとは別に、ソダーバーグの中ではメジャー・スタジオの作品は、“本当に作りたいものを作るため”という位置づけなのかと思ったものだ。
事実、ソダーバーグは前述のレクチャーの中で、次のようにインディペンデント映画を作ることの難しさに言及している。「映画が何かを知っている幹部や重役は稀。そのため会議は、とても変な方向へ向かってしまう」「映画作りを理解していない人々が(中略)、どんな映画を作るべきかの決定権を持っていることが、映画が低迷する理由のひとつ」などなど(Deadline.comより)。
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