若者は、なぜ「無業状態」に陥ってしまうのか 城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(前編)

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西田:逆に言えば、「30代以降に自分の好きな働き方をするために、20代の間は仕事の基礎を身に付けることが大事なんだ」と割りきって考えれば、どこの企業に入るかはそんなに気にしなくていいと思う。

「資格貧乏」という言葉があるんです。資格試験の勉強にのめり込んでしまって、たとえ受かったとしても、キャリア全体から考えると逆に追い込まれている人がいる。そういう人の中には、「組織に入ってOJTを積むことから逃げてしまった」人が多いと思うんです。資格の勉強は、コミュニケーションを取らなくてもいいですからね。

日本型雇用が「採用のハードル」を上げている

西田:勤務先の大学では大学院のキャリア支援の担当をしているのですが、実は司法試験に失敗してしまったロースクールの卒業生が悲惨なことになっていることが問題視されています。学部からあわせて10年近く大学に通って修了したのに、現在の司法試験は受験回数に制限があるため、司法試験に合格できなかった場合には、工場でパンを焼くアルバイトにさえ受からなかったりする。

司法試験の受験者の中には、明らかに法律の知識は人よりもたくさん持っていますが、ヒューマンスキルと言いますか、人と一緒に働くにあたっての総合的な力が足りないと感じることはあります。ただ僕自身も彼らの気持ちはよく分かります。僕も、研究室よりも、自宅の、自分の机で仕事をするのが一番落ち着きますから……。

年功序列型賃金が基本とされている日本の会社では、年齢が上がっていくほど総合的に価値の高い仕事を担当できる、担当した経験を持っていることが期待されるわけですが、一方で、無業者の年齢もどんどん上の方にシフトしている現実があります。

つまり、年齢が高いほど、より高度な価値生産の経験と実績を持っていないと採用してもらえないし、転職も困難です。無業状態の人にスキルはまるで積み上がっていない。企業の求める人材像と、職を求める人の現実がどんどん離れていっているわけですね。これも無業者を苦しめている「社会の仕組み」の問題だと思うんです。現在の支援は、就職の入口への支援が中心ですが、高度なスキルや自己尊厳の修得にまでつなげていく連続的な支援が必要に思えます。

:無業の人たちは、言い換えれば、「若い時の苦労」をする機会がない人たちとも言えます。そういう人の受け皿をどうするのか。海外だとそこに教育がはさまりますね。「今はよい職が見つからないからMBAでも取りにいこう」という話になる。そして、そこで培った人脈を次の職で活用したりする。でも、日本の場合は一度、会社組織からドロップアウトしてしまうと、たとえMBAを取ってきても、なかなか元には戻れない。

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