若者は、なぜ「無業状態」に陥ってしまうのか 城繁幸と西田亮介、「若者と仕事」を語る(前編)

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西田:あと、僕たちの調査では、(無業状態に陥っている人は)まじめで、しかし自己評価が低い人が多いという結果が出ています。これも不真面目さを追求する通説とは離れた、意外な知見ではないでしょうか。

:無業状態に陥る可能性は誰にでもある、というのはよく分かりますね。考えてみると、私のまわりにも大企業に就職してバリバリ働いていたのに、ふとしたきっかけで会社を辞めたと思ったら、その後連絡がつかなくなった……という人が何人かいます。そうなってしまう人たちと、そのまま働き続けている人たちの差がどこにあるのかと言われてもわからない。

資格よりも、組織や機会が大事?

:実は、私自身も20代の中頃に「もう仕事を辞めて、バックパッカーにでもなろうかな」と思った時期があるんです。それで週末に実家へ相談に行ったら、月曜日の朝になって母親から泣きながら「今まで何のためにお前を育ててきたと思ってるんだ」と電話がかかってきて、一週間ブルーな気持ちで過ごした記憶があります。

ただ今では「あの時辞めなくてよかった」と心底思っています(笑)。7年企業で働いたことで、ものすごくキャリアが身につきましたから。その経験を経たことで「人事の仕事を柱にすればメシは食っていけるな」と思えたので、独立したわけですけど、あの時、なんとなく会社を辞めていたら、今どうなっていたかを考えるとゾッとします。

西田さんから見て、この「無業社会」を少しでも緩和するためにできることって何だとお考えですか。

西田:今お話したように誰でも無業状態に陥る可能性はあるわけですが、統計的に言うと、無業状態の人たちは普通自動車の免許証のような、海外で言えばソーシャルセキュリティナンバーに当たるようなものを持っていない率が高いんです。日本では免許証は、身分証明証としての役割を果たしますから、それを持っていないとアルバイトなどでも通りにくかったりします。それから、PCのスキルをまったく持っていない人が多い。経済的な事情などで、そもそもPCに触れたことがない人も結構な割合でいます。

:いわゆる「働いていない若者」は、一日中パソコンに張り付いているイメージがあったので、むしろPCスキルが高い人が多いのかと思っていたんですが、そういうわけでもないんですね。

西田:そうなんです。僕が主張したいのは、とりあえず「入り口の平等」をできるかぎり確保しましょうよということです。今の行政による就職支援というと、どうして「資格取得を手助けします」といった均質的なものになるのですが、それ以前の「最初の一歩」に目を向けて欲しい。つまり、家庭の経済状態が悪かろうが良かろうが、望めば普通免許を取ることができたり、PCを最低限使えるようにする機会を用意する。まずは、そのレベルの土台をしっかり築くことから始めないと、いくら「資格取得支援」をしても意味がないと考えているんです。

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