宇宙にエイリアンがいるのか本気で考えてみたら 「フェルミのパラドックス」vs.「浸透理論」

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ひとにぎりのコロニーが成功を収め、4世紀ほどのちに、それらが独自の文明を、みずからのコロニーを送り出せるほど発展させられるとしよう。そうしたコロニーが目的地に着き、成功を収めてから、またみずからのコロニーを送り出し、それを繰り返して天の川銀河に拡大しつづけていくのだ。

銀河に広く入植したエイリアンに私たちが会えない理由

それぞれのコロニーに対し、ランディスは子コロニーを送り出す確率Pと、送り出さない確率1-Pを割り当てている。また、浸透閾値Pcは、入植の波がどれだけ遠くまで届くかを規定する因子だ。PがPcよりはるかに低いと、入植の波は最初の文明の近くで止まってしまう。PがほぼPcと等しければ、入植した恒星系のクラスター(かたまり)ができるものの、その周りにはまだ入植されていない空隙がたくさんある。PがPcよりはるかに高いと、小さな空隙は残るが、入植は広く行きわたる。

このモデルは、ロボットプローブ〔注:小型探査機〕の入植の波に対しても当てはまる。ロボットプローブは機能停止するおそれがある。いずれプログラムが壊れると、入植や探査が止まってしまうのだ。入植の手段がどうであれ、またPとPcをどんな値にするにせよ、最終的な結果はつねに変わらない。

『彼らはどこにいるのか 地球外知的生命をめぐる最新科学』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

やがて、行き止まりがどんどん増えて、入植の波は天の川銀河を浸透していくうちに、小川へ、細流へと減速し、完全に停止する。空隙の存在は、G‐HATがタイプⅢ文明〔注:ソヴィエトの宇宙物理学者ニコライ・カルダシェフは、宇宙文明のレベルを3段階で考えた。タイプⅢ文明は銀河全体に広がる帝国を実現できる文明を指す〕を発見できなかったわけを説明してくれる。浸透理論にもとづけば、文明が銀河を隅々まで完全に植民地化することはできそうにないのだ。

こうしたすべてが本当なら、われわれは空隙にいる可能性が高く、これでETがそばにいる形跡がまだ見られない理由が説明できるだろう。空隙の大きさは、浸透閾値の大きさによって決まる。われわれは、その先へ入植せずに滅びた古いコロニーの文明に囲まれているのかもしれないのだ。

キース・クーパー 科学ジャーナリスト、編集者

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Keith Cooper

科学ジャーナリストおよび編集者。マンチェスター大学で天体物理学の学位を取得。専門は、天体物理学、宇宙論、宇宙生物学、地球外知的生命探査、惑星科学。2006年以降、イギリスの天文学専門誌『Astronomy Now』の編集者を務めている。また、『ニュー・サイエンティスト』誌、『フィジックス・ワールド』誌などに寄稿。

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