アメリカの沈みゆく島で見た「気候変動」の大実害 島はどんどん海に埋もれ、住民は故郷を離れる
ジャン・チャールズ島の面積はかつての10分の1に
アイランド・ロードを進んでいくと、この周囲でもっとも高く、もっとも険しい突起に沿って道は左に急カーブする。長さ3.2キロメートル、幅0.4キロメートルのこの突起がジャン・チャールズ島だ。
半世紀前、あるいはもっと最近まで、島の面積はこの10倍あった。水鳥の生息する沼が、チェニアー〔砂状になっている浜堤平野の一部〕や木で覆われた隆起を囲んでいた。そのうえで数百名の住民が生活を営んでいたのである。
現在、アイランド・ロード沿いの家の多くは、高さ4.8メートルほどの支柱の上に高床式で建っている。地面の上にとどまっている家の窓からはイバラが外に向かって生い茂り、生育期が来るたびに窓枠をゆがめていく。比率は1対2といったところだ。支柱で持ち上げられた家1軒に対し、放棄された家が2軒。残っている人1人に対し、立ち去った人が2人。
島の先端に向かうと、高床式の家の下に男性が一人で座り、青紫色の光を背後から浴びて強風を楽しんでいた。私が通り過ぎると、彼はこう叫んだ(……)「あなた、エリザベスだろう」。
「ということは、あなたはクリス・ブルネットね」と、ベランダの代わりとなっている打ち放しコンクリートの厚板に上りながら、私は答えた。彼は、旅立つ数週間前に私がかけた電話に応じてくれた唯一の島民だった。私たちは金曜日にランチの約束をしていた。そのあとで、約束の日の前日に島まで歩いてくることを私は決めたのだった。
「明日まで、あなたはこの辺に来ないと思っていた」クリスはすぐそばにある車椅子のシートに腕をついて体を支え、前に体重をかけながら身をよじった。彼は生まれつき脳性まひを患っていたが、そのことで活力を失ったわけではなかった。私たちは握手した。
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