3000人超を取材した男の「話の引き出し方」絶妙技 「1時間でぶつける質問の数は6つ」が適度なワケ

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その後、ここまでの数はなかなかなくとも、多くの人、同業者を含めてですが、実は質問をたくさん考え過ぎてしまっているということを知りました。そして私自身は、用意している質問の数が極めて少なかったのだということにも気づいていきます。

例えば先にも少し触れていますが、1時間のインタビューなら、私が考える質問はせいぜい6つほどです。6つなら、ひとつの質問に対して10分ほどコミュニケーションできる計算になります。

質問をして、「おお、それは素晴らしい」と思える回答がスパッと引き出せることはそうそうありません。だから、戻ってきた答えに対して、その場で質問を繰り出していくのです。

「今おっしゃった○○というのは、どういうものでしょうか」

「どうしてそのときに、そうお考えになったんでしょう?」

「そもそもその決断をなさったのは、どういう理由からだったのでしょうか?」

戻ってきた答えに対して、その答えの裏側の事情について質問していくのです。そうすることで、答えの真意がより深く理解できます。なぜその答えが出てきたのか、引き出すことができるのです。戻ってきた答えをそのままにしておくと、こうはいきません。

最初から、戻ってきた答えに対して、そのままにして用意してきた次の質問に移る、というつもりは私の中にはありません。質問も6つしかないわけですから、コミュニケーションの相手もそう考えているはずです。

だから、戻ってきた答えにとにかく集中し、次にどんな質問を続けられるかを考えながら聞いていくのです。そうすることで、答えが終わったあとに、パッと次の質問に移れる。

深掘りできそうなキーワードを準備しておく

聞きながらメモを取るとき、浮かんだ質問をノートの端っこに書いておく、ということも有効な方法だと思います(私もよくやります)。

そしてもうひとつは、提出してある6つの質問のそれぞれについて、その後のコミュニケーションを深めていくにあたってキーワードになりそうなものをあらかじめ準備しておくのです。多くのケースで2つか3つ。

『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』(河出書房新社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

私はこれを「枝葉の質問」と呼んでいます。6つの質問は「幹の質問」。本質的な質問であり、抽象的な質問。それに対して「枝葉の質問」はそれに付随した具体的な質問であり、キーワードです。

この両方を準備しておくことで、12から13ほどの質問が用意できていることになります。これだけあれば、質問に困ったり、沈黙が続いたりすることはまずありません。

もちろん「幹の質問」で戻ってきた相手の回答に反応して質問も繰り出すわけですが、そこで「枝葉の質問」も使うことができる。もし、うまく会話が進んで話が引き出せるようなら、「枝葉の質問」は無理に使わなければいいわけです。幹と枝葉の発想があれば、質問を作り過ぎることも防げるのです。

(出所)『引き出す力――相手が思わず話してしまうひとつ上の「聞く力」』(河出書房新社)

前回:苦手な相手からうまく話を引き出せる人のスゴ技(1月1日配信)

上阪 徹 ブックライター

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うえさか とおる / Toru Uesaka

ブックライター。1966年、兵庫県生まれ。早稲田大学商学部卒業。ワールド、リクルート・グループなどを経て、1994年、フリーランスとして独立。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに、雑誌や書籍、Webメディアなどで幅広くインタビューや執筆を手がける。これまでの取材人数は3000人を超える。他の著者の本を取材して書き上げるブックライター作品は100冊以上。2014年より「上阪徹のブックライター塾」を開講している。著書は、『1分で心が震えるプロの言葉100』(東洋経済新報社)、『子どもが面白がる学校を創る』(日経BP)、『成城石井 世界の果てまで、買い付けに。』(自由国民社)など多数。

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