3000人超を取材した男の「話の引き出し方」絶妙技 「1時間でぶつける質問の数は6つ」が適度なワケ

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そして、コミュニケーションを進めながら、きちんと時間も把握していく。もらっている時間内に終わらせるべく、会話をコントロールしていく。そうすることで、相手も安心して話すことができる。

そのためにも「このもらった1時間で何を話してほしいか」ということは事前に伝えておいたほうがいいと思います。そうすることで、話さなければいけないことをどこまで話しているか、相手にもわかります。

私自身がインタビューを受けるときもそうなのですが、時間内にきちんと終わらせられそうだ、この人は終わらせてくれそうだ、という安心感は大きな信頼につながっていくと私は感じています。

ちなみにオンラインでのコミュニケーションでは、腕時計を使った相手へのコミュニケーションはできません。そこで私がやっているのは、何時まで時間をもらっている、ということを冒頭で再確認することです。これだけで、時間への意識を伝えられます。

ひとつの質問に2分では深い話はできない

質問を事前に考える大切さはよくわかっている。なんとか話を聞きたい。いい話を引き出したい。途中で質問が思い浮かばなかったら困る……。

いろいろな理由があるのだと思いますが、質問は考えるものの、それをめぐって大きな失敗をしてしまう人がいます。あらかじめ質問を作り過ぎてしまうのです。

これはインタビューを受ける側として、駆け出しの若いライターの方から取材されたときに教わったことでした。

同業者、しかも私のようなベテランに取材するというのは、とてもやりにくかったと思いますが、その方から送られてきた質問リストを見て私はびっくりしました。おそらく30か、40ほどはあったのではないかと思います。

インタビューの予定時間は1時間。単純に計算すればわかりますが、30の質問があったら、ひとつのやりとりには2分しかないことになります。わずか2分で、さて深い話ができるかどうか。

もちろん、取材する側には悪気はなかったと思います。私から話を引き出そうと一生懸命、質問を考えてくださった。まだ経験が浅く、質問はたくさんあったほうがいいとお考えになったのでしょう。

しかし、ひとつ2分で答えられそうにない質問もあります。そのまま進めてしまうとまず時間内には終わりそうにない。結果的に、聞きたいことが聞けずに原稿が作れない、なんてことになっては申し訳ない。

そこで私はたくさんある質問を眺めて、ポイントになりそうなものだけをチョイスし、インタビュー時に「このマーカーを引いたところだけをちゃんと聞いてくだされば、記事はできると思うのですが、いかがですか」と提案をしました。

インタビューは無事に終わり、お礼を言われました。質問を考えることは大切ですが、ひとつ2分では深い話はできないこと、答える側も大変であることを伝えました。その後のその方のキャリアに少しでもお役に立てていたなら、と思っています。

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