子供が「親と違う人生」を送れば幸せになれる訳 ライフシフトを支援しない企業は生き残れない

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一方、マルチステージに移行していく中で私たちが必要としている“年金”は、単なる将来のお金というだけではありません。そこに、未来のスキルや健康も加わります。だからこそ、新しい雇用形態が生まれつつあるのです。

人生の後半に向けて十分な準備をしよう

そんな中で2つ、印象的なことを紹介しましょう。1つは、どの年代でも人々はより柔軟な働き方を求めているということです。先ほどリンダが男性の育休について話していましたが、これからは「育児休暇は母親が取るもの」という考え方が変わっていくでしょう。

アンドリュー・スコット/英ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、米スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者。英国予算責任局アドバイザリーボードと英内閣府栄誉委員会のメンバー。邦訳著書に『LIFE SHIFT』『LIFE SHIFT2』(リンダ・グラットンとの共著)(撮影:今井康一)

とりわけ高齢者は柔軟な働き方を重視していることがわかっています。より一層、柔軟性に配慮した環境を作っていく必要があるでしょう。

もう1つは、私たちはすでに柔軟性を高めるテクノロジーを手にしているということです。柔軟性を高めるために企業が具体的な策をとれるという点で、素晴らしい試みになると思います。

変化が本当に必要なのは、人生の後半です。私たちは人生の前半に向けては十分な準備をしていますが、後半までは準備が整っていない人がほとんどです。

だからこそ私たちは、将来のためのお金、健康、スキル、目的意識や価値観、そして参加意識を確保することに関心を持つのです。私たち自身が取り組むべきこともあるでしょうし、職場の設計や製品の開発を通じて、企業が私たちをサポートすることもあるでしょう。

私が本当に心配していることの1つは、世代間の分離です。シニアマネージャーなどといった、管理職の肩書を見ると、年功序列や階級的な概念がありますよね。

柔軟な人生を送るうえでは、より高い肩書を求める時期ばかりではなく、その肩書から降りたくなるときもあるでしょう。

本当に重要なのは、異なる世代が協力して働くことで得られる価値を確実に引き出すことです。日本のように上下関係の意識や価値観がある国では簡単なことではありませんが、それを実現することが、企業が成功するためのカギとなります。

働き方を変えるテクノロジーはすでにある

日本の企業はこれから、若い人材を見つけることがますます難しくなります。そこで、おそらく2つのことをするでしょう。1つは高齢な労働者が可能な限り幸せで生産性高く働けるようにすること。もう1つは、先述の通り柔軟性を提供することで優秀な若い人材を確保できるようにすることです。それが企業にできることだと思います。

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