子供が「親と違う人生」を送れば幸せになれる訳 ライフシフトを支援しない企業は生き残れない

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リンダ:素晴らしい指摘だと思います。世界は、高齢化社会のサポートという点で、日本企業に期待しています。日本は世界でも有数の高齢化社会です。また、高い技術力も持っています。アンドリューと私は、特に人生の後半をサポートする製品やサービスを開発している日本の企業に大変興味を持っています。

今こそ、日本企業にはイノベーションを起こす真のチャンスがあると思います。人々は将来のスキルを身につけたいと思っています。経済的な余裕を持ちたい、健康を維持したい、スキルを維持したい、生き甲斐を持ちたい、といったことです。

企業はそのすべてについて、人々をサポートすることができます。

世界中の人々が日本で何が起こっているのかに注目しています。なぜなら高齢化は日本だけに当てはまることではなく、人口の多い中国でも日本と同じように高齢化が進むと誰もが気づいているからです。

若い人が最高の形で年を重ねられるようにしよう

アンドリュー:ここで私は、2つのことを強調しておきたいと思います。1つは、私たちは高齢化社会という問題に対してばかり多くの時間を費やしているということ。

もう1つは、そうであるにもかかわらず、私たちはかつてと同じような速さで老いてはいないということです。それこそ、私が本当に重視したいことなのです。

平均寿命が延びていることを考えると、年齢に関係なく、かつてより時間的に余裕があることになります。日本で生まれた子供は、史上初めて、20%以上の確率で90歳以上、場合によっては100歳以上の寿命を期待できるようになりました。

そして危険なのは、若者が老人になるという事実よりも、老人の数が若者よりも多いということに関心を集中させすぎ、あまりにも多くの時間を費やしてしまうことです。この2つの点において突出していることが日本の特徴です。

若者よりも老人のほうが多いのは、出生率の低下が著しいからです。一方、平均寿命という点で日本は非常に優れており、最も長い寿命を誇る国になっています。この2つのトレンドから、若者よりも老人のほうが多く、若者が老人の域に入るには時間がかかるようになっています。

日本はこの長寿社会を最大限活用すべきでしょう。今の若い人たちが、これまでで最も健康で生産性の高い年長者になるようにしなければなりません。それこそが日本にとっての対処法になるでしょう。

多くの高齢者の面倒を見ることはもちろんですが、それ以上に、若い人たちが最高の形で年を重ねられるように注力しなければなりません。

私が日本に興味を持つ理由は、そこにあるのです。若者よりも年配者が多いことに対処していくだけでなく、実際に私たちが目指しているのは、若い世代が活躍できるように未来を変えていくことです。

だからこそ、個人が行動を変えていく必要があり、企業の変革が求められているのだと思います。日本政府としても、若い世代が元気に暮らせるように、彼らに焦点を当てていかなければなりません。(鼎談3回目につづく)

(構成:笹幸恵)

アンドリュー・スコット ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授

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Andrew Scott

ロンドン・ビジネス・スクール経済学教授、スタンフォード大学ロンジェビティ(長寿)センター・コンサルティング・スカラー。ロンジェビティ・フォーラム共同設立者であり、英国予算責任局のアドバイザリーボードと英国内閣府の栄誉委員会メンバーも務める。邦訳された著書に『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』がある。

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リンダ・グラットン ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授

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Lynda Gratton

ロンドン・ビジネス・スクール経営学教授。世界をリードする「働き方の未来」の専門家。全世界で最も権威ある経営思想家ランキングである「Thinkers50」では、トップ15にランクインしており、2018年には安倍晋三元首相から「人生100年時代構想会議」のメンバーに任命された。著作である『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』シリーズ(アンドリュー・スコットとの共著)は日本で大ベストセラーに。長寿社会におけるキャリア構築の考え方――「人生100年時代」というキーワードをつくり出した中心人物である。

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平野 未来 株式会社シナモン代表取締役社長CEO、シリアル・アントレプレナー

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ひらの みく / Miku Hirano

東京大学大学院修了。レコメンデーションエンジン、複雑ネットワーク、クラスタリングなどの研究に従事。2005、06年にはIPA「未踏ソフトウェア創造事業」に2度採択。2016年にAIエンジン開発を手がけるシナモンを設立。2021年より内閣官房新しい資本主義実現会議有識者構成員に就任。また、世界経済フォーラムが選出する世界に変化をもたらす40歳以下のヤング・グローバル・リーダーズ(YGL)の2022年度クラスに選出。三児の母。

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