三宅:いろいろな情報がネットに流れているという現状では、「素人の患者がごちゃごちゃと変な知識を身に付けてくるな」というのがお医者さんの大半の認識だと思いますが、むしろ亀田先生からしたら画期的なわけですね。
患者が自分のカルテを自由に閲覧
亀田:うちはカルテもどんどん公開しますよ。1995年から、全病院的に電子カルテを導入しています。これは世界でも初めてです。電子カルテが何をもたらすかというと、情報の共有なんですよ。
たとえばカルテが紙でひとつしかなかったら、医療の質はあまり上がらない。大きい病院で栄養室に栄養指導をお願いしますと言ったときに、指示簿に病名と年齢しか書いていなかったら、決まりきったことしか指導できないですよ。やはりカルテを見なければ、詳しいことはわからない。服薬指導だって、リハビリだってそうです。
だから患者さまのカルテは病院内で取り合いになるわけですよ。だって1枚しかないんだから。朝になるとナースは申し送りをしないといけないし、ドクターはそこに書き込みをしたい。でもそれが完全に情報共有できれば、質の向上に直結するのです。医療というのは、体の中の情報を取り出してそれを評価分析し、必要だと思われる治療という介入をして、介入した後に再び体の中の情報を取り出して評価分析し、どういうふうに変化したかを検証しながら進めていくものなんですよ。だから体の中の情報がすべてといってもいい。これを共有するのはすごく重要です。
最初は院内の情報共有から始まりましたが、当然、それが病院と病院の連携につながり、その後はいよいよ患者さまとの情報共有です。うちでは2002年ころからPLANET(プラネット)といって、世界中どこからでも登録さえすれば自分のカルテが見られますから。
三宅:そこまでやっている日本の病院は、ほかにありますか?
亀田:本格的にやっているところは、まだ世界中どこにもないはずです。カルテを見られるのは患者本人だけでなく、家族や本人が許可した人もです。たとえば田舎のお父さんが入院したとしましょう。子どもは東京で働いていて、心配だけどそうしょっちゅうはお見舞いに行けない。でもお父さんがいいよと言えば、子どもは東京から毎日お父さんのカルテを見られます。
三宅:先駆的な取り組みをなさっているのがよくわかりました。ほかにはどのような取り組みをなさっているのでしょうか?
亀田:救急医療や小児医療、災害医療などの公的医療がありますね。これをやっているのは公立病院だと思っている人もいますが、実は千葉県の中で公的医療をいちばんやっているのは当院なのです。千葉県の委託を受けてやっているほとんどの高度医療もそうですし、千葉県から初めて指定を受けた総合周産期母子医療センターも当院です。救急救命センターは日本の医療法人で初めて認可を受けましたし、臨床研修指定病院も医療法人としては日本初。今回、千葉県の災害医療の基幹病院になりましたし、そういう意味で網羅的にやっていますね。
三宅:ありがとうございます。次回はなぜそんなに新しいことを次々とできるのか、お聞きしたいと思います。
(構成:長山清子、撮影:今井康一)
※続きは10月1日に掲載します。
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