「手作り」から出発、亀田グループの秘話 亀田クリニック院長・亀田省吾氏に聞く(前編)

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東京には病院がなくなる?!

三宅:なるほど、これは深い……。面白いお話なのでもっと聞いていたいのですが、そろそろお仕事の話に移ります。亀田グループはたくさんの事業を展開していらっしゃいますね。しかも先進的な取り組みが多い。

亀田:病院は千葉県鴨川市を中心に、亀田総合病院、亀田リハビリテーション病院、亀田クリニックなどがあって、これを総称して亀田メディカルセンターと呼んでいます。メインはここですけれど、あとは館山市の亀田ファミリークリニックや、幕張にも2つクリニックがあって、東京の京橋にもひとつあります。連携医療機関として、地域医療センターや訪問看護ステーションもあります。ほかにも関連法人が運営する亀田医療技術専門学校、亀田医療大学、今年(2014年)の4月にできたばかりの安房医療福祉専門学校があり、医療従事者の教育にも取り組んでいます。

また関連の社会福祉法人では、セーフティーネットの役割を担うべく、昨年から無料低額診療や、独居老人のケアなども行っています。鴨川の亀田メディカルセンターは地域の最大の雇用の場ですし、安房一帯を住みやすい魅力的な町にして移住者を増やそうという「安房10万人計画」も動かしています。

三宅:最初に亀田先生にお会いしたとき、「東京にはそのうち病院がなくなるから、三宅さんも今のうちに鴨川に来たほうがいいよ」とおっしゃっていたのが印象的でした。私も10万人に組み込もうとされましたね(笑)。

亀田:そうでした(笑)。医療というのは、長寿社会になるとニーズが高くなりますが、絶対に医療が主役になってはいけない。人間は年をとると、病気になることを心配して生きますね。それは仕方がない部分があるとしても、もっとどうやって幸せに生きるかを考えて生きたほうがいい。そのために少しでも安心をサポートしていくのが医療の役割だというポリシーで、QOLの向上を目指しています。

三宅:亀田病院というと、質が高いとか最先端というイメージがありますが。

亀田:医療の質を高めるには、従来の医療とは違うあり方を考えていく必要があります。医療とか教育というのはパターナリズム(父権的干渉主義)に陥りやすいのですが、「させられる」という意識では満足感が得られない。そうではなくて患者自身が治療に参加するとか、自分自身が治療方法を決めるという文化にしていかないといけない。全職員に対して、こういう意識を持たせることは大事ですね。

三宅:とはいっても、単なるインフォームド・コンセントとは違うんですよね? 患者にも参加してもらうわけですから。

亀田:そのとおりです。参加してもらうためには、どうすればいいか。なぜ教育や医療がなかなかパターナリズムから脱却できないかというと、知識の偏在があるからですよ。どうしても医療のことは医者のほうが詳しい。すると患者と医者は治療法に関して議論ができないじゃないですか。だけど最近はインターネットもあるし、自分の病気のことだけでも調べようという意識のある人は調べられるわけです。でもどうやって調べればいいか、わからない人もいる。そこをサポートする、「患者さまリソースセンター」というのが病院の中にあります。そこではわれわれが患者さまにサジェスチョンするのではなく、一緒になって病気のことを調べる。患者さまに自分の病気に関する知識をもってもらうことによって、我々のイコールパートナーになってもらう。その結果、参加意識が出てくるわけです。

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