その成果が表れたのは、9月4日のロッテ戦だった。3点リードの最終回からマウンドに上がり、2死を取って迎える打者は井口資仁。ストレートを5球続けて2ボール、2ストライクとし、6球目に外角のボールゾーンからストライクに曲がるスライダーを投げると、井口は手が出ずに見逃し三振に倒れた。ベテラン打者の膝をガクッと折った悔しがり方に、「バックドア」と言われるこのボールの威力が表れていた。
高橋が振り返る。
「あのボールは2ストライクに追い込んでから、よく使うようになりました。今までは追い込むまでに使っていたんですけどね。あのボールを投げられるようになったから、インコースの真っすぐでも差し込めるようになりました。去年はスライダーを真ん中に目がけて投げていましたけど、今年は外、内、『ここは1バウンドさせなきゃ』と投げられるようになりました。僕の場合、バッターは真っすぐを待っていると思います。変化球のおかげでピッチングの幅が広がりました」
少ない球種を応用的に組み合わせる
平面で見ればストレートとスライダーと少ない球種しかないが、それを応用的に組み合わせることで威力が倍増する。自分の武器を立体的に使えるようになるには、練習用のチェックリストを用意することが最初のステップだ。鍛錬の成果で心のスイッチを入れられるようになれば、本番でパフォーマンスを高精度で発揮できるようになる。この一連の流れこそ、「試合に向けた準備」と言える。それを繰り返すことで再現力と修正力が養われていく。
ブルペンと実戦のマウンドは一直線上にあるものだ。本番で結果を出すために、両者をどう区別し、同時に結びつけて考えるか。そうした思考と実践にこそ、ブルペンエースから本物のエースになるためのカギがある。
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