西武の守護神・高橋朋己、「強さ」の秘密 練習を再現する力と、本番で修正する力

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その成果が表れたのは、9月4日のロッテ戦だった。3点リードの最終回からマウンドに上がり、2死を取って迎える打者は井口資仁。ストレートを5球続けて2ボール、2ストライクとし、6球目に外角のボールゾーンからストライクに曲がるスライダーを投げると、井口は手が出ずに見逃し三振に倒れた。ベテラン打者の膝をガクッと折った悔しがり方に、「バックドア」と言われるこのボールの威力が表れていた。

高橋が振り返る。

「あのボールは2ストライクに追い込んでから、よく使うようになりました。今までは追い込むまでに使っていたんですけどね。あのボールを投げられるようになったから、インコースの真っすぐでも差し込めるようになりました。去年はスライダーを真ん中に目がけて投げていましたけど、今年は外、内、『ここは1バウンドさせなきゃ』と投げられるようになりました。僕の場合、バッターは真っすぐを待っていると思います。変化球のおかげでピッチングの幅が広がりました」

少ない球種を応用的に組み合わせる

平面で見ればストレートとスライダーと少ない球種しかないが、それを応用的に組み合わせることで威力が倍増する。自分の武器を立体的に使えるようになるには、練習用のチェックリストを用意することが最初のステップだ。鍛錬の成果で心のスイッチを入れられるようになれば、本番でパフォーマンスを高精度で発揮できるようになる。この一連の流れこそ、「試合に向けた準備」と言える。それを繰り返すことで再現力と修正力が養われていく。

ブルペンと実戦のマウンドは一直線上にあるものだ。本番で結果を出すために、両者をどう区別し、同時に結びつけて考えるか。そうした思考と実践にこそ、ブルペンエースから本物のエースになるためのカギがある。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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