「話がわかりにくい人」を卒業するただ1つのコツ 「成果につながる説明」とはいったい何なのか

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これまで説明について分析したり実践したりしてわかったこと。それは、「できる人」は、説明する目的によって組み立て方を変えているということです。つまり、目的に合わせた最適な順序で説明を始めることができれば、誰でも説明の伝わりやすさは格段に上がるのです。

ここから私は、説明の目的を3つのフェーズに分けることで、誰でもスムーズに組み立てられることを発見しました。具体的には、説明する目的を「わかってもらう」だけにとどめません。

「わかってもらう」とは、つまり、新しいことを頭に入れてもらったり、違う視点で考えてもらったりすることです。それを前提としつつ、説明の目的によっては「相手の行動を変化させ」、さらに、「行動の変化を持続させる」ことまでを視野に入れます(次図)。

目的に合わせた順番で話し始めるといい

説明の目的を3つのフェーズに分けたうえで、さらに私は、その目的を達成できる説明の組み立て方をパターン化し、型にしました。

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例えば、「フェーズ1 わかってもらう説明」。ここでは、相手がどこまで知っているか、前提の共有をするところから入ったり、難解な情報をわかりやすく伝える説明をします。具体的には、専門用語を解説する型や物事のメカニズムを理解してもらう型を使います。

続いて、「フェーズ2 動いてもらう説明」。ここでは、起こしたい行動から逆算して、結論から伝えることもあれば、あえて結論から伝えず、プロセスを順にたどっていく説明をします。具体的には、交渉で有利に立つための型や相手の問題意識をあぶりだす型、さらには、相手の意思決定や購買行動を促す型を使います。

最後に、「フェーズ3 できるようになってもらう説明」。ここでは、好奇心を刺激するためのフレーズやヒントから入ったり、手順を細かく分けたりしながら説明します。具体的には、相手をやる気にさせる型やスキル習得を促す型を使います。

このように、「何を目的に自分は説明をするのか?」を決めてから、説明を組み立てることで、何から話せばいいのかがスムーズに決まるのです。これをやるだけで、誰でも説明上手になれるということです。

最後に。説明がわかりにくいだけで、仕事が滞ったり、提案内容などの本来の価値が伝わらなくなったりします。こういった状況は、その人の可能性を狭めることにもつながります。私は、それは社会的損失だと考えています。

そして、説明スキルは後天的に身につけられるものです。だからこそ、あなた本来の価値が世の中にもっと広がり浸透していくよう、説明の「組み立て方」の向上にぜひトライしてみてください。

犬塚 壮志 教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役

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いぬつか まさし / Masashi Inutsuka

福岡県久留米市生まれ。大学在学中から受験指導に従事。業界最難関といわれる駿台予備学校の採用試験に当時最年少の25才で合格し、開発したオリジナル講座は開講初年度で申込当日に即日満員御礼、キャンセル待ちの大盛況。3,000人以上を動員する超人気講座となり、季節講習会の化学受講者数は予備校業界で日本一(映像講義除く)。年間1,500時間以上の講義を行う中で、多種多様な説明パターンを身につけ、「大人の学び方改革」を目的に駿台予備学校を退職。講座開発コンサルティング・教材作成サポート・講師養成・営業代行をワンオペで請け負う「士教育」を経営。ありとあらゆるシチュエーションに必要な説明スキルを磨き上げる。

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