業界人が「売れない」と断言したビートルズの逆襲 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter11

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「これでそろった、と感じたよ」と、その日、リンゴがバンドに加わったときのことを、ジョージはのちに次のように回想している。

「やっと実現したんだ、という感じで、すごくしっくりきた。ライブの後、僕らはみんなリンゴと仲良くなった。みんなリンゴのことが大好きで、一緒に飲みにいったりして時間を過ごしたよ。その点、ピートは一匹狼だった。ライブが終わると、いつもすぐに姿を消してしまってね」

だが年が明けても、ビートルズのドラマーはピートのままだった。

リンゴは、トニー・シェリダンのバック・バンドに参加するために、ハンブルクに旅立ってしまったのだ。

初めてのスタジオレコーディング

デッカは、ロンドンのスタジオでのレコーディング・セッションを単なる「コマーシャル・テスト」と呼んだが、ビートルズのメンバーにとって、それはまさに人生がかかったオーディションだった。

ドイツでレコーディングをしたときに使ったのはスタジオではなく、高校に隣接する講堂だったから、本物のスタジオに入ること自体、彼らにとって初めての経験だった。

ジョンとポールとジョージは、ギターをスタジオのアンプにつなぎ、ピートはついたての向こう側にドラムをセッティングした。

音量はすべて、ガラス窓の向こうにいるエンジニアたちが4人の様子を見ながら機材を使って調整する、ということだった。

録音中であることを示す、赤いランプが灯った。

さあ、始まりだ。

セッションを終え、リバプールでデッカからの返答を待つ4人に、ブライアンが言った。

「いいかい。たとえ僕がでかい仕事を取ってきても、レザーの服のままじゃやらせてもらえないよ」

ジョンは答えた。

「わかった。スーツを着るよ。金になるなら、風船でも何でも着てやるよ! 別にレザーが大好きってわけじゃないからね」

これを聞いて、ポールもうなずいた。そろそろイメージを変えてもいいころだ。

「どちらにしても、全身レザーってのはそろそろ時代遅れだしね」

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