業界人が「売れない」と断言したビートルズの逆襲 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter11

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ところが、期待は大外れだった。

ロウが最初に口を開いた。

「ミスター・エプスタイン、率直に申し上げて、われわれはあの子たちのサウンドを気に入りませんでした。4人組のギター・グループは、もうはやりませんよ」

売れないと言われたブライアンが取った行動

ブライアンはこの言葉に衝撃を受けたが、簡単には引き下がらなかった。

「みなさん、どうかしているんじゃないですか? あの子たちの人気はこれから爆発的に広まります。いずれはエルヴィスよりビッグになるはずだと、私は信じています」

そう言うとブライアンは、「ビートルズ、人気投票で1位!」という見出しの躍る『マージー・ビート』を取り出し、幹部たちに見せた。

「この子たちは売れません、ミスター・エプスタイン。私たちは、この手のことはよくわかってる。リバプールでのレコード店の事業が好調なんでしょう。そちらに専念したほうがいい」

この侮辱的な言葉と見下すような口調こそ、ロンドン特有の気取った根性の表れだ、とブライアンは思った。

それでもブライアンは、説得の手をゆるめなかった。ビートルズを逃すのは大きな間違いだと彼らに理解させるために、詳しい情報を並べ立ててみせた。

「じゃあ、これでどうかな。トニー・ミーハンは知ってるだろう?」

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「シャドウズの元ドラマーですか?」

「そうだ。彼はいま、うちのA&R部門にいてね。トニーなら、ティーンエイジャーが求めるものを直接見ていて、よく理解している」

ブライアンはトニーに会うことに同意はしたものの、2月10日にリバプールの自分のオフィスに戻るやいなや、トニーによるプロデュース計画を断る手紙を投函した。

手紙には、こう書かれていた。

「前回お会いした後、ビートルズは別の会社からレコーディング契約のオファーを受けました」

これは、真っ赤なウソだった。ブライアンは、ビートルズを却下したことを必ずデッカに後悔させてやると、心に誓っていたのだ。

「デッカの連中は、ランチ代程度の費用でビートルズと契約できたはずなんだ」とブライアンは思った。

実際、トニー・ミーハン自身も、何年も後になってこう振り返っている。

「あらゆる意味で、完全な混乱状態だったよ。あれは、企業として取り返しのつかない大失敗だった」

ジェイムズ・パタースン
James Patterson

1947年米国生まれ。犯罪ものや心理ものを得意とする社会派で、
『ニューヨークタイムズ』紙のベストセラー1位を数多くの書籍で獲得している。デビュー作の『ナッシュヴィルの殺し屋』でエドガー賞を受賞。
ほかにもエミー賞、国際スリラー作家協会賞などを受賞しており、著作は150点以上に及ぶ。2019年にはNational Humanities Medal(米大統領から贈られる賞)を獲得した。翻訳された作品には他に『大統領失踪』『殺人カップル』などがある。映画化された作品も多い。自論は、「本嫌いの人などおらず、ツボにはまる本に出会っていないだけだ」。

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