業界人が「売れない」と断言したビートルズの逆襲 『ジョン・レノン 最後の3日間』Chapter11

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同時に、ポールの頭を疑問がよぎる。でも、これはいわゆる、魂を売るってやつなんだろうか?

「魂を売る、なんてふうには思ってなかった」と、ジョージはのちに語っている。

「ゲーム感覚だったよ。自分たちを売り込むためにはテレビに出なくちゃいけなくて、テレビに出るためにはスーツを着なくちゃいけない、というなら、スーツを着るまでだ。ひらひらしたドレスだろうが何だろうが、ライブがやれるなら何でもよかった」

「ついでに言っておくが」とブライアンは続けた。

「本当にいまよりも大きな舞台で仕事がしたいなら、ステージの上での飲食は禁止だ。汚い言葉を使うのも、喫煙もやめろ」

「わかったよ、やめるよ」、少なくともステージ上では、とジョンは胸の中でつぶやいた。

クリーンなイメージでも大はしゃぎの4人

後になって、ジョンはこう説明している。

「ブライアンは、僕らのイメージをクリーンにしようとしていた。成功したいなら、ステージの上でチキンを食うなんて行儀の悪いことはやめろってわけだ。僕らは、ブライアンについていくことにした」

1月29日月曜日、ブライアンはビートルズをバーケンヘッドにあるベノ・ドーンの店に連れていった。ブライアン行きつけの仕立屋だ。

4人は「下襟は絶対に細め、パンツもものすごく細く」することを要求し、主任職人を閉口させた。

だが本人たちは大はしゃぎでこの体験を楽しみ、店員の女の子たちを夢中にさせた。

(しぶしぶとはいえ、ジョンがステージでスーツを着てネクタイを締める、という皮肉な事態に、叔母のミミは大喜びし、笑い飛ばした。「ハハハ、これでみすぼらしい格好も終わりね、ジョン・レノン」)。

1週間後、ブライアンはデッカの幹部に会うために、1人でロンドンに向かった。

役員専用のダイニング・ルームに通されたブライアンを待っていたのは、A&R部門トップのディック・ロウ、営業部長のスティーヴ・ビーチャー=スティーヴンズ、彼のアシスタントのアーサー・ケランドという面々だった。

重役がそろっているのを見て、これは期待できそうだ、とブライアンは思った。

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