もうちょっと憎まれ口を叩かせてもらうと、リッター170円やガロン3ドルのガソリン価格で泣きが入るようでは、「脱炭素」なんて目標は取り下げたほうがいい。そんなことでは、ガソリン車からEV(電気自動車)への切り替えなど進みませぬぞ。「2050年カーボンニュートラル」は、その程度の覚悟で達成できる目標ではありますまい。
さて、バイデン政権の支持率低下は、ほかにもいろんな理由が重なってのことである。ワクチン接種が進まないために夏から感染者数が再拡大したこと、「カブール陥落」で外交安保政策の不手際がクローズアップされたこと、そして連邦議会が与野党対立だけでなく、民主党内の「左派対穏健派」の対立で停滞していることなどだ。
しかるに、よりストレートに政権の足を引っ張っているのが、昨今のアメリカ経済の物価高である。10月の消費者物価指数は前年比6.2%増となった。
物価は前年比で表示するから、コロナ禍による需要減で物価が下がりぎみだった去年に比べれば、今年のデータが高めに出るのは当たり前。だから「インフレは一時的な現象」とFRB(連邦準備制度理事会)は説明し続けてきたわけだが、昨年10月のCPI(消費者物価)はすでに前年同月比で1.2%増となっていた。そこからさらに今年の10月は同6.2%増なのだから、さすがに「一時的」とは言えなくなってきた。
中央銀行としてはとんだ「読み違え」で、ジェローム・パウエル議長への信認が急に揺らぎ始めた。
物価高が止まらない3つの理由
なぜ物価高が止まらないのか。1番目の理由は個人消費の過熱である。コロナ下のアメリカ政府は、給付金をはじめとする大盤振る舞いに打って出た。日本の場合は給付金の7割が貯蓄に回ったといわれるが、アメリカ人はしっかり使ったのである。
それも外食や旅行、ジム通いなどのサービス消費が止まっていた手前、モノをバンバン買いまくった。ついでにいえば、彼らは株も買ったのである。
商品の発注はスマホからポチるだけで済むが、売る側はちゃんと商品を届けなければならない。つまり需要はクリックでバーチャルだが、供給のデリバリーはリアルなのである。この「非対称性」が、いわゆるサプライチェーン問題を引き起こした。
アメリカ西海岸には中国から来たコンテナ船が群れをなし、荷役が滞って消費者の手元にモノが届かない、そしてコンテナが還流しない。今年になって、せっせと空のコンテナをアジアに戻しているけれども、今度は陸送用のトラック運転手が足りないときている。もっともこれらは、時間はかかるけれども、いずれは解決するはずの問題である。
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