中国の「鋼材価格」、10月から2割超急落の深刻度 マンション着工減や自動車減産で需要が後退

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マンションの新規着工減少などにより、中国では10月から鋼材需要の後退が顕著になっている(写真は安徽省合肥市で建設中のマンション群)

中国で鉄鋼製品の価格がにわかに急落している。11月12日の鋼材市場では(建物の鉄筋などに使われる)異形棒鋼の先物価格が1トン当たり4249元(約7万5844円)と、10月の最高値の5808元(約10万3673円)より27%低下した。同じく熱延コイルは1トン当たり4547元(約8万1164円)と、最高値の5833元(約10万4119円)から22%下がった。

「価格の下降圧力は第3四半期(7~9月)からかかり始めた。10月に入って鋼材需要の後退が顕著になり、値下がりに拍車がかかっている」。中国鋼鉄工業協会の副会長を務める駱鉄軍氏は、11月12日に開催された鉄鋼業界のフォーラムでそう語った。

駱氏が言うように、直近の価格急落の主因は鋼材消費の低迷だ。証券大手の国信証券が11月8日に発表したレポートによれば、不動産業に対する金融機関の融資抑制で(大量の鉄筋が使われる)マンションなどの新規着工が減少している。地方政府のインフラ整備の資金調達手段である「専項債」も発行ペースが落ち、公共工事の一部がスローダウン。さらに、世界的な半導体不足で自動車メーカーも減産を余儀なくされている。

粗鋼生産が減少しても製品在庫は増加

中国鋼鉄工業協会の統計によれば、主要鉄鋼メーカーの2021年10月下旬の製品在庫は1284万5000トンと、前月より7.45%増加した。2021年初頭との比較では、在庫の増加率は10.53%と2桁に上る。

気がかりなのは、鉄鋼メーカーの生産量が(中国政府のエネルギー消費抑制政策の影響で)減少しているにもかかわらず、製品在庫の増加が止まらないことだ。中国国家統計局のデータよれば、中国の2021年9月の1日当たり粗鋼生産量は245万8300トンと、8月より8.45%減少。1年前との比較では21.2%も減っており、過去3年間で最低を記録した。

本記事は「財新」の提供記事です

粗鋼生産の減少に伴う原料需要の縮小で、鉄鉱石の市場価格も大幅に下落している。中国国内市場の11月12日の先物価格は1トン当たり546.5元(約9755円)と、2021年5月中旬につけた最高値の1358元(約2万4240円)より6割も安い。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は11月13日

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