「車載用電池の供給不足は2022年まで続く可能性が高い。そのボトルネックとなっているのは(電池メーカーの生産能力ではなく)原材料の供給だ」。
6月12日に開催された中国の自動車業界のフォーラムで、新興電池メーカーの蜂巣能源科技(SVOLT)の総裁(社長に相当)を務める楊紅新氏はそう語った。SVOLTは2018年の設立で、その大株主は中堅自動車メーカーの長城汽車の董事長(会長に相当)を務める魏建軍氏だ。
車載用電池の価格は、ガソリン車に対する電気自動車(EV)の市場競争力を左右する。業界では過去に、容量1キロワット時(kWh)当たりの電池の価格が2025年には500元(約8560円)まで下がり、EVとガソリン車の車両価格は同等に近づくと予測されていた。
ところが、この予想が覆される可能性も出てきた。楊氏によれば、2020年後半に新エネルギー車の販売が伸び始めたのに伴い、「原材料価格が3割近く上昇した」という。原材料価格の高騰が続いた場合、車載用電池の価格が予想どおりに下がるか雲行きが怪しくなっている。
(訳注:「新エネルギー車」は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
原材料不足に拍車がかかる
6月11日に中国汽車工業協会が発表したデータによると、2021年5月の新エネルギー車の販売台数は21万7000台に達し、月間販売台数の過去最高記録を更新した。 2021年に入ってからの5カ月間で、新エネルギー車の累計販売台数は95万台に達し、前年同期比で3.2倍に膨らんだ。そのうちEVは79万4000台と8割以上を占め、前年同期比3.5倍の売れ行きだった。
楊氏によると2020年10~12月期以降、高品質の車載用電池の需給が逼迫し、電池の種類によっては(EVメーカーの)注文に対して約60%~80%しか応えられない状況だという。新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)で董事長(会長に相当)を務める李斌氏は、2021年1~3月期の決算説明会で、「(EVの)生産台数は半導体と車載用電池の供給に左右されているのが実態だ」と語った。
新エネルギー車の販売急増を受け、電池メーカーは生産能力を急ピッチで拡大している。そのことが、電池の部品や原材料の不足にさらに拍車をかけている状況だ。リチウムイオン電池の正極材を開発・生産する容百新能源科技の幹部は、5月27日の同社の投資家向けイベントで「EVメーカーからの注文が旺盛で、2021年4~6月期は生産ラインがフル稼働になる見込みだ」と明かした。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は6月13日
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