アメリカの半導体設計大手クアルコムは、中国の通信機器最大手の華為技術(ファーウェイ)に対して半導体を出荷するための許可をアメリカ政府から取得した。11月13日、クアルコムの広報担当者が明らかにした。ただし、許可の対象は旧来の4G(第4世代移動通信)用の半導体で、最新の5G用は含まれない。
クアルコムはスマートフォン用SoC(訳注:システムオンチップの略称。CPUや通信モデムなどの基幹機能を1つのチップにまとめたもの)の世界最大手であり、今回の許可獲得はファーウェイにとって大きな意味を持つ。ファーウェイはアメリカ政府の制裁で半導体の調達が困難になっており、チップの在庫が尽きた時点でスマホの生産を継続できなくなる可能性があったからだ。そのリスクは少なくとも当面は回避された。
アメリカ政府が今年5月に対ファーウェイ制裁を強化して以降、クアルコムは禁輸措置の見直しを求めて議会などへの積極的なロビー活動を展開してきた。そんななか、同社は7月末に特許紛争の和解とライセンス契約の締結についてファーウェイと合意。半導体業界では、この動きはクアルコムからファーウェイへのSoC供給実現に向けた布石とみられていた。
5Gスマホの生産停止リスクは変わらず
さらに11月4日、クアルコムは同日開示した2020年7~9月期決算にファーウェイから受け取った和解金18億ドル(約1887億円)および7~9月分の特許使用料を計上した。これにより、同社がアメリカ政府から出荷許可を獲得するメドがついたとの観測が広がった。
なお、スマホ用SoCでクアルコムを追い上げる台湾の半導体設計大手の聯発科技(メディアテック)も、ファーウェイ向けの出荷許可をアメリカ政府に申請している。しかしまだ認可されたとの情報はない。クアルコムは、現時点ではファーウェイにSoCを供給できる唯一のサプライヤーという優位なポジションを得たことになる。
とはいえ、ファーウェイの5Gを封じ込めるというアメリカ政府の方針は変わっていない。
アップルをはじめとするスマホ大手の主力機種が4Gから5Gに移行するなか、ファーウェイの5Gスマホはキーデバイスを調達できないことによる生産停止リスクに依然直面している。しかし短期的な解決策は見当たらないのが実態だ。
(財新記者:葉展旗)
※原文の配信は11月14日
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