鋼材価格の上昇が続くなか、中国の造船業界は厳しいコスト環境にさらされている。5月18日、国有造船大手の中国船舶集団(CSSC)は決算説明会で「新造船の受注価格は多少上がったものの、造船に用いる鋼材の値上がり幅のほうが大きく、利益率に悪影響を及ぼしている」と説明した。
ある国有造船所の関係者は財新記者の取材に対し「2万4000TEU(20フィートコンテナ換算)級のコンテナ船を例にとると、船体価格は約1億5000万ドル(約163億5000万円)になる。それに対して建造に必要な鋼材の値段は近年2000万ドル(約21億8000万円)以上も跳ね上がり、船体価格に占める鋼板価格の割合が昨年末の25%から40%近くまで上昇した」と語った。
造船業界はもともと利益が薄く、鋼板などのコスト上昇は利益を大きく圧迫する。「今年は利益を出すのが難しい。赤字にならなければラッキーだが、今受注している仕事の大部分は、鋼板価格の上昇により赤字回避は難しそうだ。だからと言って受注しなければ、ドックの確保もできず、生産も止まってもっと赤字になる。造船所は仕方なく受注している状況だ」。前出の国有造船所の関係者は、そう溜息をつく。
鋼材メーカーと船主の板挟み
また造船業は国際競争が激しく、生産能力も過剰気味になっている。「船主は世界各地の多数の造船所から見積もりを取って価格を比較する。なかでも韓国の造船所は強力なライバルだ」(前出の国有造船所の関係者)。
一般的に造船契約は変更がきかず、契約時に船主と造船所の間で価格、支払い条件、引き渡し時期を決めてしまえば、契約期間中の原材料価格の上昇、為替変動などのリスクはすべて造船所が引き受ける。そのため、造船市場が好調なときは、船の価格と支払い条件は造船所にとって有利に働くが、市場が低調なときは船主に有利となる。
造船業界における鋼板の仕入れに詳しい別の関係者は、「現在中国の鋼材市場は供給不足の状況にある。造船所は鋼材価格の値下げ要求に聞く耳を持ってもらえなくなった」と語る。
そのうえで、この関係者は「造船所は厄介な立場に置かれている。船の値段は船主の言いなりで、鋼材価格も鉄鋼メーカーの要求を受け入れるしかない。造船所は間に挟まれて耐えがたい状況に追い込まれている」と漏らした。
(財新記者:賈天琼)
※原文の配信は5月19日
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