虐待、薬物…壮絶な人生を逆転させた29歳の決断 生きることに諦めた子どもたちを助けたい

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「私たちは、秩序の外で生きざるを得ませんでした。パッと見、周りからはなんの問題もなさそうに見える親であっても、家に帰れば、薬物を使ったり、暴力をふるったりする。そこに秩序なんてありません。大人はみんなウソつきで信用できないと思っていました。

ルールを決めて作るのは、秩序の内側にいる大人たちです。でも、周りにいた大人たちは、誰もルールを守ってくれなかった。それでも私たち子どもにはルールを守れと強要しました。ウソつきの大人たちが作った、大人にとって都合のよいルール。自分たちだけが従うのは理不尽だと感じました。

学校の先生などに『ルールを守りなさい』と言われても、『どうせ家に帰れば、自分もルールを守らないウソつきの大人なんでしょ』などと思い、言うことを聞く気持ちにはなりませんでした」

「秩序の外」で生きる日々は、中学1年生まで続き、ある日、警察に補導された風間さんは、児童自立支援施設に入所することになった。

毎日「死にたい、自分を痛めつけたい」と

児童自立支援施設は、不良行為をした(あるいはそのおそれがある)か、家庭環境上の理由で生活指導が必要な子どもたちの自立を支援する施設だ。生活指導のほか、学習指導や心理的なケアもおこなわれるという。

しかし、風間さんは「こころが安らぐことはなかった」と施設での日々を振り返る。

入所後、風間さんは「解離性障害」と診断された。解離性障害は、自分が自分であるという感覚がなくなったり、自分の中にいくつもの人格が現れたりするなどの症状が出ることがある病気だ。主に、心的外傷(トラウマ)や大きなストレスを受けたことなどが要因で発症するとされている。

風間さんも「別の人格」が現れることがあった。しかし、その間の記憶がないため、施設にいるほかの子どもたちから「ウソつき」などと言われ、イジメを受けるようになった。

「毎日、死にたい、こんな自分を痛めつけたい、と思っていました。治療のために処方された薬を飲まずにためておき、オーバードーズ(処方薬などを多量に摂取すること)をしては、病院に運ばれ、胃洗浄を受けていました。施設を出たくて脱走したり、絶食して入院したこともあります」

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